2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物-エンドファイト-バクテリア共生系による新たな生物学的窒素固定技術の確立
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17H03948
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
下田 宜司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (80415455)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エンドファイト / 内外生バクテリア / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、菌類の生理的特性が菌糸等に内外生する細菌類の影響を受けることが明らかになってきた。例えば、根部エンドファイトDSEであるVeronaeopsis simplex Y34より分離されたRhizobium pusense Y9はDSE菌糸に内外生することで、DSEのトマトへの定着率を向上させることが明らかになっている。そこで、同細菌の近縁種である細菌4種R. pusense Y9、Rhizobium sp. G-R、Rhizobium sp. AR70DおよびEnsifer sp.1003を選定し、これらと共培養したDSEを植物に接種することで植物生育およびDSEの根部定着率及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。供試細菌類の系統解析の結果、Rhizobium sp. AR70DはV. simplex Y34に内外生していると考えられているR. pusense Y9と近縁であった。また、これらの細菌は、エンドファイトP. indicaに内生するAgrobacterium radiobacter PABac-DSMに近縁であった。植物接種試験は、細菌のみの処理区であるAR70D処理区、Y9処理区、1003処理区、G-R処理区、およびDSEのみの処理区、さらにはDSE+Y9処理区、DSE+AR70D処理区、DSE+1003処理区、またDSE+G-R処理区、そして対照区の計10処理区とした。DSE処理にY9およびAR70D処理を加えるとDSEのトマトの根への感染率が約20%増加した。一方、Ensifer sp. 1003やRhizobium属の中でクレードが離れているRhizobium sp. G-R処理での感染率向上は認められなかった。以上より、R. pusense Y9やAR70DのRhizobium属細菌は菌類に対して植物との共生に影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分離されたRhizobium属細菌の窒素固定能やV. simplex Y34との生理的特異性に関わる相互作用が明らかになった。また、圃場条件下におけるV. simplex Y34の他の微生物との相互作用の解析も進んでいる。特に、トマトへの接種試験においてR. pusense Y9と同細菌に近縁であるRhizobium sp. AR70DをV. simplex Y34に共培養接種することで対照区よりも同DSEの定着率が20%増加することを明らかとし、菌類と相互作用を示す細菌類の存在を提唱出来た。また、V. simplex Y34を定着させたトマトをハウスで栽培し、トマト根圏や根内、また周辺土壌の微生物叢の変化を経時的に調査したところ、真菌叢は処理区・対照区で差が見られた。また、同区内では根圏・根部の真菌叢は類似していた。一方、細菌叢は処理区・対照区で類似しており、ハウス土壌・根部・根圏土壌で差が見られた。以上より、ハウス栽培においても栽培初期にV. simplex Y34を定着させることにより根圏や根内の真菌叢が変化し、またトマトの収穫量が増加することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素固定能の試験に関して、アセチレン還元活性ではR. pusense Y9およびR. pusense AR70Dのどちらもアセチレンは検出されなかった。このことから、R. pusense Y9およびR. pusense AR70Dは単独では窒素固定能を保持しないことが示唆された。今後炭素条件を変えた追加試験を行っていき、また、他のRhizobium属細菌でも同様の試験を行っていく予定である。また、V. simplex Y34を定着させたトマトをハウスで栽培し、トマト根圏や根内、また周辺土壌の微生物叢の変化に関しても行う予定である。
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[Journal Article] Core microbiomes for sustainable agroecosystems.2018
Author(s)
Hirokazu Toju, Kabir G. Peay, Masato Yamamichi, Kazuhiko Narisawa, Kei Hiruma, Ken Naito, Shinji Fukuda, Masayuki Ushio, Shinji Nakaoka, Yusuke Onoda, Kentaro Yoshida, Klaus Schlaeppi, Yang Bai, Ryo Sugiura, Yasunori Ichihashi, Kiwamu Minamisawa and E. Toby Kiers.
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Journal Title
Nature Plants
Volume: 4
Pages: 247-257
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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