2018 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring unknown mechanism of anaerobic soil disinfestations for encouraging reductive transitions and specific disinfestations
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17H03955
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小原 裕三 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (20354045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇佐見 俊行 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (50334173)
宍戸 雅宏 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80302537)
天知 誠吾 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80323393)
門馬 法明 公益財団法人園芸植物育種研究所, その他部局等, 科長 (80469626)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌還元消毒 / 低濃度エタノール / フザリウム / センチュウ / トマト萎凋病菌 / ウリ科植物黒点根腐病菌 / 半身萎凋病菌 / 検定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
還元化促進土壌と還元化が緩慢な土壌の計10種類を用いて、低濃度エタノールを等量となるように調整添加し、低温条件における温度限界を明らかにし、処理中の物理的因子及び生物的因子の推移を比較した。 トマト萎凋病菌(Fol)を対象に、土壌中微生物菌相をメタ16S解析により決定したところ、Firmicutes門細菌の存在量とFol生菌数に負の相関が見られた。Folを唯一の炭素源とする嫌気性微生物集積系を調製し、ここからDesulfotomaculum guttoideumに近縁なFirmicutes門細菌Tar-0株の分離に成功した。Tar-0の殺菌効果は熱処理やフィルター処理でも失われなかったことから、何らかの菌体成分が殺菌成分として寄与する可能性が示唆された。 半身萎凋病菌の微小菌核を還元消毒後の土壌抽出液に懸濁して30℃下に静置したところ、菌数は3時間後に100分の1程度まで減少し、24時間以内に死滅した。この土壌抽出液を分画した結果、消毒活性は分子量3,000以下の画分にあり、65℃・20分の加熱後も安定であり、熱安定性のある低分子の物質であることが示唆された。 ウリ科植物黒点根腐病菌に対して、本病にも高い効果が見られた新潟土と比較したところ、新潟土のみが本病原菌子嚢胞子を死滅させた。また、その効果は滅菌処理によって失われた。メロン幼苗検定による評価では、嫌気性細菌が新潟土のウリ科植物黒点根腐病菌への消毒効果に関与している可能性が示された。 土壌表層部での還元消毒効果が不安定になりやすい砂質土壌を用いて、低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒を小麦フスマ処理等と効果を比較評価した結果、トマト萎凋病菌はエタノール区、小麦フスマ処理では水処理区よりも多く生き残ることが明らかとなった。一方で、根こぶ線虫ではエタノール区では土壌表面でも高い抑制効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元化促進土場と還元化が緩慢な土壌を用いて、対象とした病原菌と環境条件において、密度低減効果に関与する物理的因子及び生物的因子についての解明は順調に進んでいる。 個々には、トマト萎凋病菌については、還元消毒後に優占するFirmicutes門細菌から、Folに対する殺菌活性を有するTar-0を分離でき、半身萎凋病菌については、消毒に関与する物質の性質や分子量を解明することができ、ウリ科植物黒点根腐病菌についても、その要因である可能性の高い嫌気性細菌が単離され概ね順調に進んでいる。排水性の良い土壌還元消毒に不適とされている砂質土壌において、根こぶ線虫、トマト萎凋病菌の抑制効果を評価し、特に土壌表層部においてその効果が不安定になることを確認したことから、おおむね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き還元化促進土壌と還元化が緩慢な通常型の土壌の計10種類を用いて、対象の土壌病原菌の密度低減効果の本体となる可能性の高い因子として抽出されたものについて、in vitroで各種病原体に密度低減効果を示すか検討し、通常型土壌に当該因子を付与することにより確認を行う。その際には、当該因子の他にも、特に有機酸、金属イオン、ラジカル種の経時的推移の評価し網羅的に解析する。 トマト萎凋病菌については、成分として鉄分をほとんど含まないヤシ殻培地を用いて、優占種の決定および15℃においてもFol殺菌活性を示す菌株の分離を試みる。最終的にこれまでに分離したいくつかの菌株を用いて、滅菌土壌に接種したFolを消毒できるか検討すると共に、殺菌因子の特定を目指す。 半身萎凋病菌については、候補となる有効成分が黒根病菌などの半身萎凋病菌以外の病原菌にも関与するか検討し、消毒メカニズムの普遍性を確認し、消毒成分の特定を目指すとともに、消毒効果を高めるための方法を考察する。 ウリ科植物黒点根腐病菌については、分離した嫌気性細菌8菌株を同定すると共に、それぞれの菌株を用いて、メロン黒点根腐病菌の子嚢胞子殺菌作用を確認する。 新たにトマト青枯病菌について、トマト萎凋病菌と同様に密度の減衰を経時的に評価し、土壌抽出液の殺菌活性についても併せて評価する。
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Research Products
(6 results)