2018 Fiscal Year Annual Research Report
無保護ケチミンを用いる不斉四置換炭素含有第一級アミンの直接的触媒的合成法の開発
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17H03972
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大嶋 孝志 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10313123)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | N無保護ケチミン / 不斉四置換炭素含有第一級アミン / 直接的触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
不斉四置換炭素を含有する光学活性第一級アミン(R-NH2)の低環境負荷型合成プロセスの開発を目的とし、これまで反応基質として用いられてこなかった無保護ケチミン(RR’C=NH)を基質に用いることで、保護・脱保護 のプロセスを経ることなく、直接、光学活性不斉四置換炭素含有第一級アミンを合成する次世代型の直接的触媒反応の創製を目的として研究を行なっている。無保護ケチミンを基質に用いる触媒的不斉反応は、前例のない高難易度の反応であり、さらに本研究は単なる触媒開発にとどまらず、NH-ケチミンに対応した新たな触媒設計のコンセプトを提案するものである。これらの研究は、基礎研究として重要なだけではなく、創薬化学、機能性材料化学の分野の発展にも大きく寄与できるものである。 我々は平成30年度までの研究において、無保護ケチミンに対する(1)末端アルキンの付加反応(アルキニル化反応)、(1)β-ジカルボニル化合物の付加反応(Mannich型反応)、(3)芳香族化合物の付加反応(Friedel-Crafts型反応)、(4)脱炭酸型のエノラートの付加反応(脱炭酸型Mannich反応)の開発に成功し、それぞれ亜鉛-カルボキシレート触媒、アミン-ウレア触媒、リン酸触媒、Cu触媒が協奏機能的な活性化で目的とする反応を効率的に進行させることを見出した。(1)~(3)の反応においては用いることのできる無保護ケチミンは限定されていたが、その原因が逆反応の存在であることを突き止め、(4)の反応においては、可逆反応に不可逆工程を組み込むことで、基質適応範囲の拡張に成功した。 また、原料となる無保護ケチミンの環境調和型の合成法の開発にも成功し、2つの触媒を使い分けることで、種々のケトンから対応する無保護ケチミンを触媒的に合成することが可能となった(国内および国際特許出願)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・芳香族化合物の付加反応:窒素上無保護のα-ケチミノエステルに対する直接的触媒的不斉求核付加反応として、生物活性物質中に多く含まれているインドールを求核剤として用いるFriedel-Crafts反応の検討を行ったところ、3位のみにフェニル基を有するC1対称のBINOLリン酸触媒存在下、望みのFriedel-Crafts反応が高エナンチオ選択的に進行することを見出した。本条件を最適条件とし基質一般性の検討を行い、様々な置換インドール、ピロールを用いて基質一般性の検討を行った結果、本触媒反応は官能基許容性および化学選択性に優れており、酸や塩基に不安定な官能基や反応が競合しうる官能基を有する基質の適用も可能であった。また、本反応の反応機構解析を行った結果、C1対称のリン酸を用いた遷移状態において、C2対称のものに比べインドールとアントラセニル基との距離が近く、遷移状態が安定化されていることが判明した。 ・脱炭酸型のエノラートの付加反応:β-ケト酸を求核剤として活用し、可逆なMannich反応に不可逆な脱炭酸反応を組み込むことで、以前報告した反応では実現不可能であった、窒素原子が無保護のイサチン由来のケチミンに対する反応が脱炭酸を伴って円滑に進行することを見いだした。本反応は様々な置換基を有する基質に適用可能であり、高い収率およびエナンチオ選択性にて不斉四置換炭素を有する窒素上無保護の非天然アミノ酸類を直接合成できました。さらに、今回開発した反応を活用して、ガストリン受容体拮抗薬の1つである(+)-AG-041Rの世界最短(6段階)合成にも成功した。 また、原料となる無保護ケチミンの環境調和型の合成法の開発にも成功し、種々のケトンから対応する無保護ケチミンを触媒的に合成することが可能となり、さらに連続反応への展開にも成功した。 以上の研究成果より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の研究は、無保護ケチミンおよび求核剤の適応範囲をさらに拡大し、より広範な光学活性第一級アミン(R-NH2)の低環境負荷型合成プロセスの開発することを目指し、(4)の反応の概念を拡張し、共同研究も含めて様々な触媒反応への展開を検討する予定である。 無保護ケチミンの環境調和型合成法の開発:平成30年度までの研究において、上記の反応の原料となる無保護ケチミンを、環境調和性、汎用生、実用性の高い方法で合成する手法の開発に成功した(特許申請済み)。本手法は、連続反応への適用が可能であり、非常に不安定で単離困難な無保護ケチミンを反応系中でそのまま次の反応の基質として用いることで、様々なケトンから対応する(不安定な)無保護ケチミンを経由して、より広範な光学活性第一級アミン(R-NH2)の低環境負荷型合成プロセスを開発することを目指して検討を行う予定である。
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Research Products
(70 results)