2018 Fiscal Year Annual Research Report
抗体凝集体による免疫原性関連シグナル誘導の物理化学解析と数理モデル構築
Project/Area Number |
17H03975
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内山 進 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90335381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保仙 直毅 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (10456923)
大戸 梅治 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (90451856)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗体医薬 / 凝集 / 質量分析 / 免疫原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、特定のサイズ分布を持つ抗体凝集体による炎症性サイトカインリリースの評価および凝集体の構造解析を実施した。こうした研究にはサイズ分布の取得が必須となるが、サイズによっては測定が容易ではなかった。そこで、これまで解析が難しかったサブミクロンサイズの凝集体のサイズ分布測定法の開発も進めた。 プレフィルドシリンジタイプの蛋白質製剤の場合、保管中にシリコンオイルがドロップとして液中に放出される。そこで、シリコンオイルドロップと抗体の関係を調べたところ、シリコンオイルドロップと抗体を混合するとドロップに抗体が速やかに吸着し、主にサブミクロンからミクロンサイズの粒子を形成することが分かった。これは、まさに、特定サイズの凝集体と同等の粒子と解釈できる。抗体吸着シリコンオイルドロップをヒト末梢血単核球に添加してインキュベートしたところ、IL-6やTNFといった炎症性サイトカインが放出されていた。また、樹状細胞が抗体吸着シリコンオイルドロップを取り込みやすく、MHCの提示が促進されることも分かった。これらの結果からサブミクロン~ミクロンの抗体吸着シリコンオイルドロップは免疫原性の原因となり得ることが示された。 また、加熱によりナノメーターサイズの凝集抗体を分画その後モノマーへと解離した抗体について、水素重水素交換質量分析計により構造変化部位を解析したところ、CH2中のI257-W281が加熱に伴い露出し、おそらくは凝集に寄与していることが分かった。 サブミクロン~ミクロンサイズの凝集体の定量は定量的レーザー回折(qLD)法により実施し、同一試料を他の手法で評価した結果と比較した。その結果、これまで複数の手法を組み合わせる必要があったサイズ領域についてqLDでの一括評価が可能であることが判明した。 以上の研究についての結果はJ. Pham Sci誌に3報の論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった、凝集体と免疫原性の関係解明、凝集体構造の構造解析、を完了し、論文としての発表を実施できた。さらに、当初の計画には無かったサブミクロンからミクロンサイズの凝集体のサイズ分布の一括定量法の開発にも成功し、論文としての発表を実施できたことから、当初の計画以上に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、これまでと異なるタイプの凝集体について確立した手法を利用して解析を実施する。まず、実際の製剤を想定して、プラスチックまたはガラス製のプレフィルドシリンジに抗体医薬を充填し、静置保管または振とうを行い、発生する凝集体のサイズ分布を解析する。次のそれぞれで発生した凝集体の免疫原性への可能性を評価するため、ヒト末梢血単核球に添加し、炎症性サイトカインリリースの放出を測定する。加えて、樹状細胞への取り込み、さらにはマウスに投与して抗薬物抗体の発生に与える影響を評価する。さらに水素重水素交換質量分析法により、凝集体の構造解析を行い、凝集体中で露出している部分を決定する。以上により、サイズ分布、免疫原性、構造変化、という物性ー機能ー構造、相関解析を行い、凝集と免疫原性の関係を明らかとすることで、安全性と有効性における蛋白質凝集体の位置づけを明確化することが最終目標である。
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Remarks |
論文発表済み
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Research Products
(20 results)