2018 Fiscal Year Annual Research Report
脳の形成と機能に重要な分泌タンパク質リーリンの機能解明と、その創薬への応用研究
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17H03985
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
服部 光治 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (60272481)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳 / プロテアーゼ / リーリン / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
リーリンは巨大な分泌タンパク質であり、発生期には神経細胞の層構造の形成に必須である。成体脳では、シナプス形成やシナプス可塑性を制御する。リーリンの機能低下は統合失調症やアルツハイマー病などの精神神経疾患の発症や増悪化に関与するとい考えられている。 我々は、リーリンを特異的に分解・不活化するプロテアーゼ「ADAMTS-3」を世界で初めて同定し、その欠損マウスではリーリン機能が亢進していることを見いだした。さらに、ADAMTS-3の類縁分子「ADAMTS-2」も脳に発現し、リーリン不活化に寄与することを見いだした。これらプロテアーゼの欠損マウスを用いた解析を進めた結果、リーリンの効果増強が様々な効果を脳に及ぼすことを見いだした。特に、成体におけるADAMTS-3の減弱が、アルツハイマー病を改善することを見いだした。これらの効果がリーリン分解阻害による(他の基質に対する影響ではない)ことを検証するため、リーリンの分解部位に変異を導入したノックインマウスを作製した。このマウスではリーリンの分解が顕著に減少し、また、神経突起の伸長亢進やアルツハイマー病改善効果など、ADAMTS-3欠損と同様の表現型をもつことを確認した。 ADAMTS-3欠損マウス、リーリン分解抵抗型ノックインマウス、リーリン欠損マウスの脳に発現する遺伝子を半網羅的に解析した結果、リーリンが一部のグリア細胞に影響する可能性を見いだした。これは、かなり以前に示唆されたことがあるアイデアであったが、現代の知識・技術を用いては解析されておらず、リーリン研究に新たな展開をもたらす可能性のあるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーリン機能増強がアルツハイマー病を改善することを示すことができた。 計画していた遺伝子改変マウスを全て完成させ、一部前倒しで実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
リーリン分解抵抗型ノックインマウスなどを用い、リーリン機能増強による疾患改善効果およびその分子メカニズムの解明を目指す。グリア細胞に対する影響は培養細胞なども用いて、詳細に解析する。
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Research Products
(21 results)