2018 Fiscal Year Annual Research Report
Brain temperature and microglia
Project/Area Number |
17H03988
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 隆太 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (90431890)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マイクログリア / シナプス / 熱性けいれん / 抑制性シナプス / TRPV4 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、てんかん原性の獲得に寄与する現象として、乳幼児期に生じる複雑型熱性けいれんと、脳内免疫細胞であるマイクログリアに着目した。熱性けいれんは通常38℃以上の発熱によって引き起こされるが、けいれん状態が重篤な複雑型熱性けいれんは、将来のてんかん発症に関与することが示唆されている。しかし、複雑型熱性けいれん後のてんかん原性の獲得過程におけるマイクログリアの役割は殆ど明らかにされていない。 そこで、本研究では高温刺激によって誘導する実験的熱性けいれんモデルマウスを利用して、熱性けいれんによるマイクログリアのプロパティ変化を詳細に検証した。その結果、熱性けいれん後の歯状回では、マイクログリアが抑制性シナプスを貪食することで、シナプスE/Iバランスが興奮性優位に傾斜することが明らかになった。なお、シナプスE/Iバランス破綻の結果として、熱性けいれん後のけいれん閾値が低下した。また、これらの現象は、マイクログリアの不活性化薬であるミノサイクリンによって抑制された。 マイクログリアは補体を認識してシナプスを貪食するが、我々は、熱性けいれん後の抑制性シナプスに補体が局在することを発見した。さらに、補体の局在化の一因として、熱性けいれん時の脳内温度に活性化領域を有する温度感受性受容体「TRPV4」が関与することを明らかにした。 以上の発見は、マイクログリアやTRPV4をターゲットとした「抗てんかん原性」薬の創薬に貢献しうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクログリアが熱性けいれん依存的に抑制性シナプスを貪食するメカニズムとして、神経細胞の活動と補体の関与を示すデータを得ており、本研究の目的の達成に近づいているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
マイクログリアが抑制性シナプスを特異的に貪食するメカニズムを明らかにする。このメカニズムに関して、私は以下のような仮説を立てた。すなわち、熱性けいれん時に抑制性神経細胞が過剰に活動することが、マイクログリアにとってのFind meシグナルとなり、これがマイクログリアを抑制性シナプス終末付近に誘引しているのではないかと考えた。この仮説を検証するため、神経細胞の活動を時空間的にコントロールするDREADDシステム)を利用した。同システムでは、遺伝子改変を加えたムスカリン受容体と、これらの受容体に特異的なリガンドである「CNO(clozapine-n-oxide)」を処置することにより、in vitroおよびin vivoの両実験系でDREADD受容体を発現させた神経細胞のみを、活性化または不活性化させることが可能である。まず、CX3CR1-GFPマウスとVGAT-Creマウス(VGATプロモーターの制御化、すべての抑制性神経細胞がCreリコンビナーゼを発現)を交配し、その仔(CX3CR1-GPF::VGAT-Creマウス)にCre依存的にRFPと活性化型DREADDのhM3Dqを共発現するウィルスを処置した。本系において、抑制性神経細胞の活動を上昇させ、マイクログリアと抑制性神経細胞の接触率を検証する。また、マイクログリアが正常な形態を保持するin vitro系を開発し、同系においても神経細胞の活動をDREADDによって変化させることでマイクログリアと神経細胞の神経活動依存的な相互作用のリアルタイムイメージングを試みる。
|
Research Products
(6 results)