2020 Fiscal Year Annual Research Report
画期的な医薬分子設計を支援する多元素創薬化学の基盤構築
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17H03997
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤井 晋也 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (60389179)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 創薬化学 / 元素化学 / 多元素創薬化学 / 構造活性相関 / 構造物性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な生命科学研究手法の発展により、新たな疾患治療のアプローチが提案される一方で、合成医薬品の開発成功確率は年々低下している。その一要因として、医薬候補として合成される化合物のケミカルスペースの偏り、すなわち多様性の欠如が考えられる。本研究では、創薬化学における化合物の多様性の拡大、新規ケミカルスペースの開拓を目的として、種々のヘテロ原子の性質に着目し、生物活性化合物の構造要素としての可能性を開拓、その特徴を活かした斬新な医薬候補化合物の創製を行う。そして本研究を通して、「多元素創薬化学」とも呼べる学術分野を創出することを発展的目標とする。 当該年度は、前年度に引き続き主にリン原子に関する研究展開を行うとともに、有機金属化学種としてフェロセンを含有する化合物に関する研究を行った。リン原子の誘導体としては前年度までにユニークな構造要素として見いだしたホスフィンボランに関する検討を中心に、フェロセン誘導体に関してはフェニルフェロセン誘導体を基盤とした化合物展開を行った。当初の研究計画に則り、両化合物群に関して種々誘導体展開を行い、置換基としての疎水性パラメータや電子的効果の置換基定数、そしてエストロゲン受容体リガンドに対する生物活性を評価し、定量的な構造物性相関および構造活性相関を検討した。さらに、生物活性として新たにエストロゲン受容体以外への展開も行い、特徴的な抗腫瘍活性を有するフェロセン誘導体を見いだすに至った。フェロセンを基盤とした生物活性化合物はこれまでに種々報告されているが、フェロセン自体を骨格に用いた例は少なく、新しい生物活性化合物の設計手法を提案するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で計画している多元素フラグメントのうち、ホスフィン構造を基盤としたリン誘導体に関しては、当該年度までに様々な知見の獲得に成功し、ホスフィンボランを基盤とした特徴的な生物活性化合物を見いだすに至っている。また、当該年度に注力した有機金属化合物に関しては、フェロセンを基盤とした化合物展開を行い、これまでのエストロゲン受容体だけでなく種々の核内受容体に対する活性評価から、アンドロゲン受容体に対する活性を持つ化合物を見いだすことに成功している。フェロセン誘導体に関しては、化合物合成の過程において、複雑な化合物を合成する上での新規かつ重要な知見も得られ、今後ユニークな生物活性化合物の創製に繋がることが期待される。本研究を継続することで、新奇な医薬分子設計手法の提案に結びつくものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、リンを基盤とした化合物群、および有機金属化合物についての検討を中心に行う。また、研究計画最終年度として、これまでに創製した化合物の医薬候補化合物としての価値の増大を意図した展開を行うとともに、積極的な研究報告を行い、研究成果の公開に努める。 具体的な研究計画として、リン化合物についてはホスフィンボラン、特にホウ素原子上に置換基を有するB置換ホスフィンボランの研究展開を行う。B置換ホスフィンボラン誘導体を系統的に合成、その構造物性相関および構造活性相関の検討と解析を行い、ホスフィンボランによりどのようなケミカルスペースが開拓できるか精査する。B置換ホスフィンボランは一部の有機金属・無機化学の基礎研究として検討されてきたが、その応用については全くの未開拓であり、創薬化学、生物機能性分子化学における斬新なケミカルスペースの創出につながると期待される。メタロセンを有する化合物に関しては、これまでにシンプルなフェニルフェロセン誘導体群の構造物性相関および構造活性相関に関する情報を得たため、それを基盤とした化合物設計と合成を行う。特に、フェロセンに2個以上の置換基を有する化合物については構造的にも合成的にも新規性が高く、合成化学、機能性分子化学の様々な面で有益な知見が得られると考えている。 また、代謝安定性を検討するための実験系を導入し、これまでに創製した化合物について、代謝安定性の系統的な解析を行い、医薬品開発における多元素フラグメントの有効性の検証を行う。これらにより、多元素化合物の創薬化学の基盤を構築、提案する。
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Research Products
(11 results)