2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of human brain barrier transport mechanism based global and targeted proteomics
Project/Area Number |
17H04004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺崎 哲也 東北大学, 薬学研究科, 教授 (60155463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立川 正憲 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (00401810)
内田 康雄 東北大学, 薬学研究科, 助教 (70583590)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / 血液脳脊髄液関門 / 血液くも膜関門 / 血液脊髄関門 / 輸送担体 / 網羅的プロテオミクス / 標的プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
脳には、1)血液脳関門、2)血液脳脊髄液関門、3)血液くも膜関門、4)血液脊髄関門があり、各々大脳毛細血管内皮細胞、脈絡叢上皮細胞、くも膜上皮細胞、脊髄血管内皮細胞が実体である。本基盤B研究ではヒトのこれら脳関門の物質輸送機構を解明することを目的とする。ブレインバンクから高品質の凍結保存されたヒト大脳、脳室脈絡叢、くも膜、脊髄を提供いただき、各脳関門細胞を単離し、細胞膜と細胞内画分を調製し、次世代型の網羅的半定量的探索質量分析法(SWATH)と、代表者らが開発したin silico設計法に基づく標的絶対定量質量分析法を用い、新規を含む機能性タンパク質の探索・同定・絶対定量を行う。機能未知の輸送担体候補タンパク質は発現系を構築し、メタボローム法で基質を同定し、機構解明する。これらを期間全体の3年間で達成する。 初年度は、貴重なヒトサンプルでの解析の前段階として、ブタを用いて大脳から高純度の毛細血管を単離する方法、左右側脳室と第三脳室と第四脳室から脈絡叢を単離する方法、大脳皮質4領域と脊髄3領域に分けて各々からくも膜を多く含軟髄膜を単離する方法、脊髄を3領域に分けて毛細血管を単離する方法を確立した。さらに、各サンプルについてSWATH法を用いて半定量的網羅的タンパク質発現解析を行った結果、各関門における輸送担体の発現に量的質的な顕著な違いがあることが分かった。従来、くも膜は単なる物理的障壁と信じられてきたが、非常に多種類の輸送担体が多量に発現することが分かった。当初計画にしたがって、ヒトの凍結大脳から毛細血管を単離したが、ブタで確立した手法では極めて純度が悪い結果が得られた。そこで、方法を根本的に見直し高純度に単離する方法を確立することができた。ガラスビーズ法を最終段階で導入することで血球細胞の混入を劇的に低下させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト凍結大脳からの脳毛細血管単離方法が、ブタで確立した方法では純度が極めて低いことが開始6ヶ月後に判明した。その後、4ヶ月掛けて根本的に単離法を見直し、高純度に単離する条件を確立することができた。 くも膜についてはブタで検討したところ、大脳皮質領域と脊髄領域では軟髄膜重量当たりのくも膜上皮細胞マーカータンパクの含有量が顕著に異なることが判明した。これは部位によって機能性タンパク質の発現量が異なるのか、あるいはくも膜上皮細胞の占める割合が異なるのか、区別ができないことになる。そこで、この課題を克服するための手法を開始10ヶ月目から行ったところ、初年度末にほぼ確立することができた。 質量分析についてはSWATH法で非常に重要なペプチドデータベース構築法をさらに改善し、解析結果の信頼性を向上させることに成功した。 以上、研究結果の信頼性の向上に非常に重要な実験条件を初年度に徹底的に見直して改善することができたことから、二年目以降には計画の遅れを取り戻して、成果を得る計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はブタ組織を用いて技術的課題を解決し4種の関門についてプロテオミクス解析を行い、関門間と部位間で質的量的な大きな違いを見出したことから、ヒト組織での解析の重要性が示された。ヒトの凍結大脳から高純度の毛細血管を単離する方法を確立し、プロテオミクス解析に着手したことから、2年目はヒト脳毛細血管、脈絡叢、軟髄膜を用いたSWATH解析を行うと共に標的プロテオミクス解析を行い関門間と部位間での質的量的な違いを解明する。 特に、脳毛細血管については,、既に私達が標的プロテオミクスの手法を用いて報告済の輸送担体以外に今回は高感度化法とSWATH法の併用によって新しいタンパク質を発見することが見込まれる。 脊髄についてはブタで確立した方法とヒト大脳で確立した毛細血管単離手法を組み合わせて最終年度に解析を行う予定である。 輸送機能を解明するためにメタボロームの手法を確立し、最終年度にはこの手法を用いて関門の輸送機能解明研究を推進する予定である。
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Research Products
(9 results)