2018 Fiscal Year Annual Research Report
がん化学療法誘発末梢神経障害の発症機構解析と予防/治療薬の探索
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17H04008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 貴之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30303845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 周司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (60177516)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬理学 / 医療薬学 / 抗がん剤誘発末梢神経障害 / シュワン細胞 / 有害事象ビッグデータ / ドラッグリポジショニング / ガレクチン-3 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん剤による末梢神経障害(CIPN)に対する予防/治療薬開発を目指して、シュワン細胞分化誘導能を有する薬物あるいは害事象ビッグデータ解析からスクリーニングを進めている。 1)シュワン細胞脱分化/再分化に関する基礎的検討:パクリタキセル処置により脱分化した培養シュワン細胞からガレクチン3が遊離され、この条件培地がマクロファージを遊走させることを明らかにした。また、マウス坐骨神経にリコンビナントガレクチン3を処置すると、マクロファージの坐骨神経への遊走および機械過敏応答が惹起されることを明らかにした。 2)シュワン細胞分化誘導能を指標としたスクリーニング:シュワン細胞の分化マーカーMBP/未分化マーカーp75の免疫染色により一次スクリーニングを実施し、シュワン細胞分化誘導能を示す複数の一次候補薬(既承認薬および新規化合物)を得た。さらに、初代培養シュワン細胞を用いて分化誘導能を再確認し、その分化誘導能の強度と濃度依存性、さらに、細胞毒性の低さを確認し、特に細胞毒性が弱く、分化誘導能の強い二次候補薬を数種類得た。また、その類縁化合物も同様の作用を示すことを確認し、同時に二次候補薬とした。また、先に同定していたシュワン細胞分化誘導能を示す既承認医薬品シロスタゾールが、想定通りパクリタキセルによるCIPN動物モデルで機械過敏応答、および、坐骨神経でのシュワン細胞における脱分化マーカーp75発現を抑制することを確認した。 3)有害事象ビッグデータ解析によるCIPN予防/治療作用を示す併用薬の探索:FAERSの解析により、タキサン系(パクリタキセル等)およびボルテゾミブによるCIPNの発生を抑制出来る併用薬を探索し、複数の候補医薬品を選定した。その1つとして、パクリタキセルによるCIPN動物モデルで抗凝固薬の低分子ヘパリン・ダルテパリンにより機械過敏応答抑制作用を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シュワン細胞分化誘導能を示す薬物を、既承認医薬品の化合物ライブラリーから一次スクリーニングしていたが、期待していたシュワン細胞分化誘導能を示す一次候補薬を得ることはできなかった。そのため、一次スクリーニング条件を検討しなおし、既承認医薬品の化合物ライブラリーを追加するとともに、新規化合物ライブラリーからも一次スクリーニングを追加実施した。一次候補薬の選定に約5ヶ月の遅れが生じたが、計画予定の変更後、無事に強力なシュワン細胞分化誘導能を示す薬物を見つけ出すことに成功し、初代培養シュワン細胞での再確認実験でも良好な結果を得ている。結果として、やや進捗は遅れているが、目的とする候補薬物を一次/二次スクリーニングにより得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の1つの柱である計画2. シュワン細胞分化誘導能を示す薬物のスクリーニングに遅れが生じたが、他の研究計画(計画1. シュワン細胞脱分化/再分化による神経軸索障害/再生に関する基礎的検討、計画3. 有害事象ビッグデータ解析によるCIPN予防/治療作用を示す併用薬の探索)は予定通り進行している。計画1.についてはおおよその結果が揃ってきたので、研究人員を計画2. シュワン細胞分化誘導能を示す薬物のスクリーニングに回し、本研究計画全体の遂行を目指す。
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Research Products
(18 results)