2017 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス感受性・抵抗性におけるモノアミン神経相互作用とその機能的意義
Project/Area Number |
17H04030
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外山 英和 新潟大学, 脳研究所, 特任助教 (40377198)
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90332650)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ストレス / ドパミン / セロトニン / ノルアドレナリン / 中脳 / SSRI / DREADD / ユニット記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
セロトニン再吸収阻害剤SSRIの薬理学研究は「セロトニン=抗ストレス」概念を生んだが、最新生理学研究はむしろ恒常的な中脳ドパミン神経活動の重要性が説かれる。本計画の目的は、この矛盾を解明しストレス感受性における3種モノアミン神経活動の相互作用とドパミンの本当の役割を明らかにすることである。慢性物理ストレス負荷したうつ病モデル動物とサイトカイン投与で作製したストレス感受性EGFラットを用いて、3種モノアミン神経活動を計測し、各モノアミン神経活動の優位性と役割をまず推定した。次にドパミン神経を手始めにモノアミン神経の活動を光遺伝学操作や薬理遺伝学操作法を用いて介入する実験を開始した。 1)当該モデル動物における3種モノアミン神経発火活動:社会的敗北ストレスを慢性的に負荷したラットでは、VTAドパミン神経発火が亢進、DRNセロトニン神経発火は変化なし、LCノルアドレナリン神経発火が有意に低下した。高ストレス感受性のEGFラットでは、VTAドパミン神経発火が亢進、DRNセロトニン神経発火とLCノルアドレナリン神経発火は変化していなかった。 2)セロトニン再吸収阻害剤(SSRI)によるモノアミン神経発火活動変化:社会的敗北ストレス負荷ラットでのドパミン神経発火の異常亢進は、SSRIの一種フロキセチンの慢性投与で正常化された。 3)ドパミン神経の発火操作による他モノアミン神経とストレス耐性への影響:ストレス感受性EGFラットは高いVTAドパミン発火を呈するが、DREADD法により強制的にその発火を低減させると、社会的ストレスに抵抗性を獲得した。しかし当該ラットのDRNセロトニン神経活動はドパミン神経活動変化の影響を受けていなかった。これらいずれの実験結果も、ストレス感受性はセロトニン神経活動に支配されるのではなく、ドパミン神経活動の直接的な関与をむしろ示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つのストレス感受性モデル動物を作製して、その動物の3種モノアミン神経(ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン)活動とその変化をモニターすることで、ドパミン神経活動の重要性が再認識できた。この仮説を実証するために、本計画では神経エンジニアリング法の活用を予定しているが、初年度にはCREレポーターラットをもちいて、DREADD法にてVTAドパミン神経活動を人為的に慢性操作することに成功した。その結果、ドパミン神経活動がセロトニン神経活動に影響する可能性が否定された。現在、もう一つの神経エンジニアリング法であるChR2ウイルスベクターを使った光遺伝学操作法も予備実験が完了したところであり、ドパミン神経の短期的操作にむけ、順調に計画が進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初本研究では、慢性・急性ストレス両方のパラダイムで共通に使え、強度調節が容易なストレッサーである電気ショックを主に刺激に使用することを想定していたが、強い電気ショックは動物倫理の観点で問題が生ずる可能性があるので、緩和な社会的ストレスを刺激として使うことに変更する。 またドパミン神経活動の介入タイミングについては、当初、A1,A2,B1,B2, C1,C2, C3の7様式を想定していたが、実験が煩雑になってしますので、基本的にはA1,B1,C1のストレス付加との同時介入を中心に実施することとする。
|