2017 Fiscal Year Annual Research Report
脂質二重膜での心筋小胞体Ca2+輸送調節装置の超微細構造解析と創薬への応用
Project/Area Number |
17H04033
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
乾 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70223237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 健 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30457311)
酒井 大樹 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40464367)
倉増 敦朗 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90302091)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心不全治療薬 / ホスホランバン / カルシウム輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋小胞体の膜蛋白質ホスホランバン(PLN)は、Ca2+ポンプATPase(SERCA)による心筋小胞体Ca2+輸送を抑制的に調節し、心筋細胞内Ca2+制御で中心的役割を果たしている。このSERCA-PLN系は、新たな心不全治療薬の標的としても注目を集めている。 本研究では、機能を温存した状態でSERCA-PLN系を再構成して、低温電子顕微鏡(cryoEM)により超微細構造を解明しPLNによるSERCAの調節メカニズムを原子レベルで明らかにすると共に、PLNとSERCAの相互作用する薬物をデザインすることにより新たな心不全治療薬の開発を目指している。 本年度は、cryoEMによりSERCA-PLN系の超微細構造を明らかにするため、昆虫細胞にSERCAとPLNの融合タンパク質を発現させ、大量精製を行った。この際、単量体変異型PLNとSERCAを20個のグリシンで繋いだ融合タンパク質で大量生成が可能となった。CryoEMでの解析には、機能を温存した形での精製及び再構成が必須である。様々な界面活性剤やリン脂質の組み合わせで至適条件を検討した結果、界面活性剤としてはLauryl maltose neopentyl glycolが最も良く、フォスファチジルコリンとフォスファチジルセリン(4:1)の共存下で長時間(24時間以上)に渡って機能が保持できることを明らかにした。 さらに、精製したSERCAとPLNの融合タンパク質をフォスファチジルコリンとフォスファチジルセリン(4:1)からなるナノディスクに再構成した。この再構成されたナノディスクもSERCA-PLN系の活性を保持していることを確認し、cryoEMによる構造解析を行った。その結果、約13Aの解像度でのデータが得られた。更なる高解像度のデータを得るために、条件の最適化が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SERCA-PLN系の超微細構造を明らかにするためのSERCAとPLNとの融合タンパク質の大量精製を確立した。さらに、精製した融合タンパク質の機能を保持するための条件検討を行い、PLNのSERCAへの可逆的な抑制を再現する条件を見出した。このSERCAとPLNとの融合タンパク質を脂質二重層のナノディスクに再構成し、超微細構造解析を開始した。これらの成果から本研究は順調に推移しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
機能を温存した状態でSERCA-PLN系のcryoEMを用いた超微細構造解析を行うと共に、SERCA-PLN系に作用する薬物をデザインするための基礎データを得る。CryoEMによる構造解析では、更なる高解像度のデータを得るために、ナノディスクのみならず条件の変更が容易な可溶化条件下での検討も加える。薬物デザインに関しては、網羅的手法により見出したPLN作用薬の基礎データも加えて検討して行く。
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