2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 裕明 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80302602)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではがん組織で特徴的に見られる酸性環境の中でがん細胞がどのようにして活発に増殖できるのか、具体的な分子機構を明らかにするとともに、その医学生物学的重要性について追究している。培養細胞、マウス、線虫の3つの実験材料を用いて多面的な解析に取り組んでいる。培養細胞を用いた解析では、PRL高発現による酸性環境適応との関連が示唆されるlysosome exocytosisとの関わりについて調べた。リソソーム内腔に局在する複数の酵素が、PRL高発現やその結合標的分子CNNMのノックアウトによって特異的に細胞外により多く分泌されていることを見つけた。また、PRL高発現細胞の弱アルカリ条件で起こる細胞死の回避を指標とした関連遺伝子スクリーニングにも着手した。マウス生体内での腫瘍形成との関わりを調べるため、PRL高発現での効果が明確に示されているB16メラノーマ細胞で薬剤誘導性にPRLを発現調節できる細胞株を樹立した。実際にin vitroでの培養条件では発現誘導がかかることや、酸性環境でよく増殖することも確認できた。線虫を用いた解析では既に作成済みのPRLオルソログ変異体の解析を行った。その結果、偏光や自家蛍光を利用した解析によりリソソーム関連オルガネラの異常が確認できた。またリソソームに局在するLMP-1の蛍光融合タンパク質を発現する線虫との掛け合わせを行い、リソソームの挙動に関するイメージング解析が可能な実験系を作出した。さらにPRLの結合標的分子であるCNNMの線虫オルソログの変異体を利用する実験も実施した。5つのファミリー遺伝子のうちcnnm-1とcnnm-3を二重欠損させると、不稔や寿命短縮などの表現型を示すので、この変異体と上記のリソソーム可視化線虫の掛け合わせも進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではがん組織で特徴的に見られる酸性環境の中でがん細胞がどのようにして活発に増殖できるのか、培養細胞、マウス、線虫など様々な実験材料を用いて解析に取り組んでいる。29年度およびその繰越金を利用した研究によって、交付申請に記載した研究計画の重要項目をほぼ実施することができた。さらに、PRLの結合標的分子として見つけたCNNMに関して他の研究で作成していた変異体を本研究でも利用することで、PRLとCNNMの機能的に密接に関連する両分子からの重層的な解析を進めることができるようになった。これらの理由から、29年度およびその繰越金を利用した研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進展した上記の研究成果を受けて、基本的には申請時の大まかな方向に沿って、今後の研究を発展させながら進めてゆくことを計画している。またそれと共に、明確な表現型を示すCNNM変異体線虫を利用できるようになったので、それを用いてリソソームやその関連オルガネラの解析も進める。これらの研究計画を総合的に実施することで当初の想定よりも高いレベルで本研究の目的を達成できる可能性がある。
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Research Products
(12 results)