2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04051
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
深見 希代子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40181242)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リン脂質 / 上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、リン脂質代謝酵素ホスフォリパーゼC(PLC)δ1が表皮角化細胞の細胞接着・バリア機能の恒常性を維持し、その破綻がアトピー性皮膚炎などの炎症性の皮膚疾患を誘導することを明らかにすることを目的とした。その結果、表皮特異的PLCδ1コンディショナル遺伝子欠損マウスや三次元ヒト人工皮膚モデル系においてPLCδ1の発現抑制を行った場合、皮膚のバリア機能不全が生じていることを明らかにした。またPLCδ1の発現抑制におけるバリア機能不全の原因として、PLCδ1の下流シグナルであるNFATやp38MAPKの活性化の抑制とRhoAの異常な活性化を介して表皮顆粒層のタイトジャンクション不良が生じていることが明らかになった。これらの結果は、炎症性の皮膚疾患におけるバリア機能不全のメカニズム解明と治療に貢献し得る。 第二に、上皮細胞由来の大腸がん等でリン脂質代謝酵素PLCδ1がE-カドヘリンの発現調節を介して上皮間葉転換やアドヘレンスジャンクション維持、細胞運動・浸潤性に関与し、がん悪性化を制御していること等を明らかにしたので、PLC下流のシグナルである種々のプロテインキナーゼC(PKC)アイソザイムの介在性を検討した。その結果、PLCδ1により種々のPKCアイソザイムの活性が固有に制御されることを見出した。今後大腸がん悪性化を抑制するPLCδ1下流のシグナルとしてのPKCアイソザイムの役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画に沿って、「リン脂質代謝酵素PLCδ1による表皮細胞バリア機能制御機構の解析」、「大腸がんにおけるPKCアイソザイムの役割の解明」が順調に進んだ。表皮細胞バリア機能制御機構に関しては、Cell Death & differentiationに論文を発表したので、順調であると判断できる。「イノシトールリン脂質PIP2の細胞膜での新たな生理的意義の解明」についてはチャレンジ的なテーマであるが、データが蓄積しつつあるので、概ね順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
リン脂質代謝酵素PLCδ1が表皮角化細胞の細胞接着・バリア機能の恒常性を維持し、その破綻がアトピー性皮膚炎などの炎症性の皮膚疾患を誘導することが判明してきているので、今後はアトピー性皮膚炎のバリア機能不全に関わると思われる因子について広く解析する。 上皮細胞由来の大腸がん等でリン脂質代謝がE-カドヘリンの発現調節を介して上皮間葉転換やアドヘレンスジャンクション維持、細胞運動・浸潤性に関与し、がん悪性化を制御していること等を明らかにし、PLCδ1により種々のPKCアイソザイムの活性が固有に制御されることを見出した。そこで、PLCδ1下流に存在するPKCアイソザイム特異的発現抑制細胞や過剰発現細胞を作製し、増殖性、移動性、ソフトアガーアッセイ、Eカドヘリン発現解析、間葉系・幹細胞性遺伝子発現解析などを行ない、PLCδ1による大腸癌悪性化抑制機構の詳細を解明する。 またイノシトールリン脂質PIP2はPLCやPI3キナ-ゼの基質としての役割の他、細胞骨格、細胞接着等を制御している。そこでPIP2の細胞膜での新たな生理的意義の解明を行なう。
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Remarks |
https://www.toyaku.ac.jp/cms/wp-content/uploads/2017/04/プレスリリース-中村).pdf
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Research Products
(19 results)