2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04052
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
浅野 謙一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10513400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 理人 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20567630)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞死 / マクロファージ / CCL8 / CD169 / 大腸炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、以前に、CD169分子を発現するマクロファージの亜集団が消化管粘膜固有層に常在し、腸炎の進展に深く関与することを証明した。このマクロファージはCCL8を産生して炎症性単球を動員し、これがさらなる組織傷害を誘導する。骨髄細胞をM-CSFで誘導したマクロファージ(BMDM)に、腸上皮死細胞の培養液を添加すると、LPS刺激に伴うCCL8産生が亢進する。このアッセイ系を利用し、死細胞に由来する、CCL8産生促進物質同定を目指した。 BMDMを用いて、CCL8産生機序を詳細に解析した。BMDMによるCCL8産生は、LPSやpoly(I:C)で誘導されるが、CPG-DNAではまったく誘導できなかった。また、CD14 やTRIF欠損したBMDMでは、LPS刺激に伴うCCL8産生がほとんど完全に消失した。これらの知見は、CCL8産生にTRIF-IRFを介したシグナル経路が重要な役割を担う可能性を示唆する。 死細胞培養液を核酸分解酵素で処理しても、CCL8産生促進活性は消失しない。一方で、95℃、5分間加熱すると、その活性が著明に減弱した。この結果は目的分子がDNA/RNAなどの核酸成分である可能性は低いこと、タンパクないしペプチドの可能性が高いことを示唆する。続いて、死細胞培養液中の活性成分の精製を目指した。死細胞培養液をサイズ排除クロマトグラフィーで分画化したところ、分子量約1,000の画分が活性を有することが分かった。当該画分を逆相クロマトグラフィーでさらに分画化し、検出されたピークに含まれる分子を質量分析した。分析した画分には細胞骨格やRNA結合たんぱくに由来するペプチドが複数含まれることが分かったが、これまでのところ、この方法では、活性物質の同定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画では、昨年度末までにCCL8産生促進物質を同定し、当該分子がタンパクであった場合にはそのノックアウトマウスや中和抗体を作製することを計画していた。しかし、逆相クロマトグラフィーで溶出した画分を質量分析するだけでは、目的分子を絞り込むことができなかったこと、有機溶媒で溶出した画分の活性を、マクロファージで検討するためのアッセイ系の検討に時間がかかったこと、から当初の計画に遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
【実験計画1】昨年度までの研究で、死細胞培養液をゲルろ過クロマトグラフィーで分画化し、分子量約1,000の画分にCCL8産生を促進する成分が含まれることを突き止めた。今後、逆相クロマトグラフィーにより、炎症促進活性を有する画分をさらに絞り込む。有機溶媒で溶出した画分を減圧乾固する。培地で再溶解した画分をマクロファージに添加し、CCL8産生促進活性を検討する。活性を有する画分を質量分析し、目的分子を同定する。これまでの検討から、死細胞培養液中の目的分子はペプチドである可能性が高い。質量分析で同定したペプチドを化学合成し、マクロファージのCCL8産生を促進するかインビトロで検討する。
【実験計画2】当該分子の生体における発現を検討する。目的分子の生体における発現が確認できたならば、その中和抗体を作製し、デキストラン硫酸誘導大腸炎の抑制効果を検討する。目的分子がタンパクであった場合はその欠損マウスを作製する。これらのマウスにDSS 誘導大腸炎や虚血性腸炎を誘導し臨床症状を見る。
【実験計画3】腎動静脈を一過的に阻血(虚血)した後に開放(再灌流)すると、腎皮髄境界部に広範な急性尿細管壊死を伴う急性腎傷害が誘導できる。以前我々は、CD169 マクロファージが虚血再灌流で誘導される急性腎傷害を抑制することを見出している。また最近、腎虚血再灌流に伴う急性尿細管壊死にフェロトーシスが関与し、その死の阻害剤が急性腎傷害を改善することが報告された。この報告は、DSS 誘導大腸炎以外でも上皮細胞の死が炎症疾患の原因となり得ることを意味しており、本研究で同定した死細胞由来因子の阻害により腎臓を虚血再灌流傷害から保護できる可能性を示す。そこで腎虚血再灌流モデルマウスに死細胞由来分子に対する中和抗体を投与し、腸炎以外の疾患モデルに対する治療適応を検討する。
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