2017 Fiscal Year Annual Research Report
肺がんの成因及び再発に関わるがん幹細胞の発生とがん微小環境での維持機構の解析
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17H04054
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
田中 信之 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80222115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 幹容 日本医科大学, 大学院医学研究科, ポストドクター (00774358)
弦間 昭彦 日本医科大学, 医学部, 教授 (20234651)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / 肺がん / がんの再発 / がん化学療法 / p53 / Sox2 |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFR 陽性肺がんをモデルとして、がん微小環境下でマクロファージやがん間質線維芽細胞が産生する炎症性サイトカインや細胞増殖因子が、メチル化酵素複合体MEP50/PRMT5 の発現誘導とそれによる転写因子 Gli1 の活性化を介してがん幹細胞を維持していること、この経路を抑えるとがんの再発が抑えられることを見出した。更にp53 欠損細胞が活性型H-ras によってSox2 の発現を介してがん幹細胞様の細胞が出現することを発見した。そこで、rasや変異体EGFRからSox2→Oct3/4 の経路の活性化とp53 の機能抑制によってがん化=がん幹細胞の形成が起こる機構を明らかにして、それを標的とした効果的ながんの治療法の開発を目的としている。この目的で、本年度はSox2プロモーターを解析して、ras応答エレメントを同定し、このエレメントに作用する転写因子の候補はいくつかに絞った。この解析を進めると共に、この経路の阻害する低分子化合物のスクリーニングを行うための、実験系の確立を進めている。更に、Gli1 経路からがん幹細胞発生に関わる経路を明らかにする。Gli1の下流の解析を行なっており、我々が発見したPRMT5-Gli1の経路がrasの下流でもがん幹細胞の発生・維持に重要であること、rasの変異のあるがん(大腸、肺、膵臓)でPRMT5-Gli1の経路の阻害剤ががんの再発を抑える治療に有効であることを見出した。また、ヒト培養がん細胞を限界希釈して単一化しても、得られた各クローン中には必ず同じ割合でがん幹細胞が存在する。細胞間の何らかのシグナルによってがん幹細胞数が維持されている可能性があり、検討を加えているが、特に液性因子の影響に関してはIL8ががん幹細胞を誘導する機構を明らかにした。ここれに加えて、Sox2により誘導されるp53ががん幹細胞発生を抑制することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はSox2プロモーターを解析して、ras応答エレメントを同定し、このエレメントに作用する転写因子の候補はいくつかに絞った。現在、候補転写因子全てに対してsiRNAを用いた解析を行なっており、Sox2誘導に必要なシグナルと転写因子のd同定はかなりのところまで進んでいる。更に、この経路の阻害する低分子化合物のスクリーニングを行うための、実験系の確立を進めており、次年度中にはスクリーニングを開始できると考えている。更に、Gli1 経路からがん幹細胞発生に関わる経路を明らかにする目的でGli1の下流の解析を行なっており、我々が発見したPRMT5-Gli1の経路がrasの下流でもがん幹細胞の発生・維持に重要であること、rasの変異のあるがん(大腸、肺、膵臓)でPRMT5-Gli1の経路の阻害剤ががんの再発を抑える治療に有効であることを見出した。このrasの変異したがんの治療にも有効であることを見出したことは予想しなかった進展であり、今後も解析を進めると共に、治療への応用も目指している。また、ヒト培養がん細胞を限界希釈して単一化しても、得られた各クローン中には必ず同じ割合でがん幹細胞が存在する。細胞間の何らかのシグナルによってがん幹細胞数が維持されている可能性があり、検討を加えているが、特に液性因子の影響に関してはIL8がグルコース代謝の亢進、O-GlucNAc修飾の亢進を介してがん幹細胞を誘導すること、O-GlucNAc修飾阻害剤ががん幹細胞を標的とした治療に有効であることを明らかにして、現在論文を投稿している。これに加えて、Sox2が活性化するとp53が誘導されて、細胞老化の誘導によってがん幹細胞発生が抑制されることを見出し、p53によるがん幹細胞抑制の機構の一端を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Sox2プロモーターのras応答エレメントから転写因子の同定、その転写因子を誘導するシグナルの解明を進めている。これの詳細な機構を明らかにすると共に、この経路の阻害する低分子化合物のスクリーニングを行うための、実験系の確立を進めている。具体的には転写活性を抑制する分子とシグナルを抑制する分子をスクリーニングする系を開発しており、これを使ってがん幹細胞を標的とした薬剤の開発を目指す。更に、rasの変異のあるがん(大腸、肺、膵臓)でPRMT5-Gli1の経路の阻害剤ががんの再発を抑える治療に有効であることを見出しているが、この経路でPRMT5はアダプタータンパクの MEP50を介してGli1を活性化する。そこで、MEP50とGli1の結合を阻害する低分子化合物のスクリーニングの系も立ち上げようと考えている。rasに変異のあるがんは有効な分子標的薬がまだなく、意義のある研究だと考えている。同時に、IL8がグルコース代謝の亢進、O-GlucNAc修飾の亢進を介してがん幹細胞を誘導すること、O-GlucNAc修飾阻害剤ががん幹細胞を標的とした治療に有効であることを明らかにした。マウスがん移植実験でも、有効性が確認されており、この経路の治療法がどれだけ有効であるかを多くのがん細胞で確認しようと考えている。これに加えて、Sox2が活性化するとp53が誘導されて、細胞老化の誘導や代謝の阻害によってがん幹細胞発生が抑制されることを見出しているが、その詳細な分子機構、特に幹細胞化に応答してp53が活性化する機構、p53が正常ながんの幹細胞でのp53による排除の回避機構について詳細な解析を行う。同時に、I型IFNによるがん化の促進機構の解析をからがん細胞でDNA複製の亢進に伴う細胞質内DNAの増加のシグナルが関わっていることを見出しており、この解析を進めていく。
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Research Products
(9 results)