2018 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植診療に患者及びドナーが主体的に参加するための情報環境の確立及び評価
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17H04095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山敷 宣代 京都大学, 医学研究科, 助教 (90420215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野間 俊一 京都大学, 医学研究科, 講師 (40314190)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
海道 利実 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80314194)
上田 佳秀 京都大学, 医学研究科, 講師 (90378662)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移植医療学 / 受療行動 / 肝移植ドナー / アルコール性肝硬変 / スマートフォンアプリ |
Outline of Annual Research Achievements |
脳死下臓器提供数の増加、肝移植後長期経過症例の増加により、肝移植に係る医療チームの責務が増大している。医療者への負担を過度に増すこと無く肝移植の成績を維持向上するために、移植医療チームにおける診療の標準化、効率化が求められる。同時に、患者自身の自発的な受診や家族の参加など、患者自身の主体性を引き出すような取り組みが診療の効率化にも繋がる可能性がある。本研究では医療者への負担を増すこと無く、患者やドナー候補者とその家族に情報提供を可能にするために、携帯電子端末を活用した患者向けの説明補助ツールの開発を行い、患者の「理解」「長期フォローへの主体的参画」に繋がるかどうか検証することを目的とした。 初年度には、肝移植に関わる医療者側および患者側の様々なテーマから、2つに集約した。一つは、①生体肝移植ドナー候補者の理解を支援することである。携帯電子端末を活用した診療支援のツールを開発するにあたり、ある程度ニーズを絞りこむ必要があると考えた。生体肝移植ドナー候補者の術前検査に対する理解を支援するためのWebアプリケーションの改良と評価を中心に行った。 もう一つは、②移植患者に対する肝移植診療における診療体制の工夫である。こちらも疾患が多岐にわたるが、近年増加傾向にあるアルコール性肝疾患に着目した。肝移植術後の断酒継続という目標にむかって患者が長期間努力していく必要がある。当院におけるアルコール性肝疾患に対する肝移植の後ろ向き調査と、実臨床で行っている介入プログラムの評価を中心に進め、持続可能な介入方法について提案したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①について、初年度に作成したWebアプリケーション「京大肝ドナー」を開発・改良し、スマートフォンアプリケーションもリリースした。実臨床においてアプリケーションを試験的に利用し、その前後に理解度について質問紙調査を実施し、集計、報告を行った。自身で何度でも確認ができ、また検査の進捗状況についても自身で記録することが出来、検査への理解や不安解消の一助になったと考えられた。 ②については、初年度に引き続き、肝移植適応疾患における問題点について検討を継続し、また肝移植前後に見られる問題に関してタイ国Mahidol大学Ramathibodi病院消化器肝臓内科のSobhonslidsuk, A.医師らと協力し、システマティックレビューとメタ解析に取り組んだ(テーマは肝腎症候群のリスク因子解析、および肝移植後再飲酒のリスク因子解析である)。また、アルコール性肝疾患に関しては、移植術前の断酒期間が短いこと、精神疾患の合併などが移植後再飲酒リスク因子として報告されているが、当院の後ろ向き検討でも断酒期間の短い症例で再飲酒が多くみられる傾向があった。断酒プログラム開始後の再飲酒症例は減少している傾向がみられるが、観察期間が短いことから評価には時間を要すると考えられた。アルコール性肝疾患に関しては、平成30年度には精神科的尺度に関する後ろ向き評価や、アルコール代謝酵素の遺伝子多型と飲酒行動についての研究を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
①「生体肝移植ドナー候補者の理解を支援すること」については、初年度・次年度にかけて生体肝移植ドナー候補者の術前検査に対する理解を支援するためのWebアプリケーション「京大肝ドナー」を開発・改良し報告してきた。最終年度には、より汎用性の高いアプリの運用について検証を行う。 ②肝移植に関する診療体制については、最終年度も引き続きアルコール性肝疾患を中心に検討を進める予定である。平成30年度から実施している遺伝子多型調査および精神科的尺度評価について解析・報告を行う。またこれまでの調査結果を統合的に解析し、効率的で有用性の高い術前評価介入および術後フォローアップについてのアルゴリズム構築を目指したい。
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Research Products
(9 results)