2017 Fiscal Year Annual Research Report
ファーマコメタボロミクスによる薬物動態バイオマーカーの探索および実証研究
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17H04100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠原 洋之 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00302612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 健一 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60281820)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ファーマコメタボロミクス / 薬物動態学 / 内在性基質 / 薬物相互作用 / 薬物トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
1.OCT2の内在性基質の探索:N1-methyladenosine(N1MA)およびN6-methyladenosineについて、LC-MS/MSを用いた同時評価系を構築し、強制発現系における細胞内蓄積量を定量した。その結果、N1MAはOCT2基質となることを確認した。Oct1/2遺伝子を欠損したマウスにおいて、N1MAの腎クリアランスおよび腎臓-血漿中濃度比が顕著に低下することを確認した。また、臨床検体中の血漿中濃度を測定した結果、日内変動や個体間変動は大きくないこと、腎クリアランスは糸球体ろ過速度よりも大きいことを確認した。さらに、血漿中濃度は、高齢者では有意に低いことを確認し、加齢の効果が示唆された。In vitro代謝試験により、adenosineからN1AMの生成が確認され、メチル化酵素の関与が示唆された。 2.内在性OATP1B1基質を用いた薬物相互作用リスクの評価:直接・間接ビリルビン、胆汁酸硫酸抱合体(GCDCA-S)、CP-Iについて、異なる用量でのrifampicin投与の効果を評価した。その結果、直接・間接ビリルビン、胆汁酸硫酸抱合体(GCDCA-S)、CP-Iすべての血漿中濃度は増大したものの、直接ビリルビンでは用量依存性は認められなかった。用量依存性が認められた化合物については、相互に相関が認められた。これらの化合物はOATP1B1が関係した薬物相互作用を評価することができる代替性プローブとして期待される。また、相互作用の強度情報に加えて、持続時間に関する知見をえることができる優れた特性を有する。 3.イリノテカンの臨床検体の収集:イリテノカンを服用する患者をリクルートした。1名で重篤な下痢が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OCT2の内在性基質として、新たにadenosine代謝物であるN1-methyladenosineを同定した。臨床検体の測定により、糸球体ろ過速度を上回っている点、日内変動が小さい点など、プローブの特性を満たしている。加齢に伴う変動や、メチル化酵素の関与を示唆するなど、生成過程に関する知見も得ており、順調に進展している。また、OATP1B1については、阻害剤(rifampicin)を用いた臨床情報を取得し、内在性基質を用いた薬物相互作用評価を支持する結果を得ている。これらの成果を、イリノテカンの体内動態解析と関連づける。そのため、すでに10名程度の患者の検体を収集した。この内1名では、重篤な下痢が認められている。
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Strategy for Future Research Activity |
N1-methyladenosineの生合成に関与するメチル化酵素の探索を進め、合成過程の理解を深めるとともに、OCT2を阻害すると報告されている薬物が投与された臨床検体中濃度を測定することで、薬物相互作用の可能性を評価する。OATP1B1についても、同様である。また、これらの成果を、イリノテカンに体内動態の個体間変動の理解を深めるため、臨床検体中の内在性基質濃度を評価し、特に有害事象の発現が認められた事例において、各素過程の変動に関する知見を得、薬物動態バイオマーカーとしての有用性に関する検証を行う。
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Research Products
(13 results)