2017 Fiscal Year Annual Research Report
変動するヒエラルキーに着目した消化器癌治療法~マウスからヒト可視化モデルへ~
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17H04157
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
妹尾 浩 京都大学, 医学研究科, 教授 (90335266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 晃久 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (70644897)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の進展過程では、癌幹細胞を頂点とする階層性と分化・脱分化を生じる可塑性が併存し、癌組織のヒエラルキーがダイナミックに変動する。これまでに研究代表者らは、癌幹細胞特異的マーカーとしてDclk1を報告し、消化器癌の分化・脱分化の制御因子としてSWI/SNF複合体の意義を示してきた。そこで本研究では、(1)階層性を活かし癌幹細胞を標的とする消化器癌治療、(2)可塑性を活かし分化を誘導する消化器癌治療を検討し、(3)両者の意義を生体外培養系と可視化技術を用いたヒト消化器癌で検証することとした。 そのために平成29年度は、(1)申請者らが独自に同定したDclk1陽性の癌幹細胞特異的な因子のノックアウトマウスを腸腫瘍モデルマウス等と交配した。これにより、次年度以降の解析に備えたマテリアルを準備した。(2)腸腫瘍モデルマウス、膵腫瘍モデルマウス等の消化器癌モデルにおいてSWI/SNF複合体のノックアウトを行い、Brg1やArid1aなどのSWI/SNF複合体の構成因子の機能喪失が、消化器癌幹細胞に与える影響を解析した。(3)大腸癌や膵臓癌など様々なヒト消化器癌臨床検体から、ヒト消化器癌由来3次元スフェロイド培養系を樹立し、バンキング化を進めた。さらに癌幹細胞からの細胞系譜解析を可視化するため、様々なcreおよびレポーター遺伝子の導入を進めた。 これらの検討により、消化器癌の癌幹細胞動態と可塑性の本態に迫るとともに、ヒト消化器癌に対する臓器横断的な新規治療法の実現を目指す基礎を構築しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、(1)階層性を活かし癌幹細胞を標的とする消化器癌治療、(2)可塑性を活かし分化を誘導する消化器癌治療を検討し、(3)両者の意義を生体外培養系と可視化技術を用いたヒト消化器癌での検証することを予定していた。 平成29年度には、(1)申請者らが独自に同定したDclk1陽性の癌幹細胞特異的な因子のノックアウトマウスを、腸腫瘍モデルマウス等と交配することができた。(2)腸腫瘍モデルマウス、膵腫瘍モデルマウス等の消化器癌モデルにおいてSWI/SNF複合体のノックアウトを行い、Brg1やArid1aなどSWI/SNF複合体の構成因子の変異や機能喪失が消化器癌幹細胞に与える影響の解析を開始することができた。(3)大腸癌、膵臓癌など様々なヒト消化器癌臨床検体から、ヒト消化器癌由来3次元スフェロイド培養系を樹立し、バンキング化を進めることができた。さらに癌幹細胞からの細胞系譜解析を可視化するため、様々なcreおよびレポーター遺伝子の導入も順調である。 したがって、当初予定した計画のタイムテーブルに沿って、研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究進展に引き続き、(1)階層性を活かし癌幹細胞を標的とする消化器癌治療の検討を、Dclk1陽性癌幹細胞特異的な因子のノックアウトマウスにおける腫瘍形成能を解析することで完遂する。(2)可塑性を活かし分化を誘導する消化器癌治療の検証を進めるために、SWI/SNF複合体構成因子ノックアウトマウスの解析を完了する。さらに、SWI/SNF複合体標的因子の転写を指標として、SWI/SNF複合体阻害小分子化合物のスクリーニングを行う。(3)ヒト消化器癌由来3次元スフェロイド培養系バンキングを進めるとともにPDX化を展開し、マウスモデルで得られた消化器癌治療シーズのヒト消化器癌生体外モデルでの薬理薬効評価を目指す。 これら一連の研究を通じて、消化器癌の階層性と可塑性を標的とし、ダイナミックに変動するヒエラルキーに着目した新規消化器癌治療戦略の確立を目指す。
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Research Products
(10 results)