2017 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstructive analysis of molecular regulation in epithelial stem cell and its niche in the lung
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17H04185
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森本 充 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, チームリーダー (70544344)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経内分泌細胞 / 幹細胞 / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器の上皮組織はmucociliary clearanceによる吸気の浄化、バリアー機能、外環境のセンサー、さらに多様な損傷からの修復機能を併せ持つ多機能器官である。それゆえに上皮細胞の異常は多様な疾患と深く関わっている。本研究では、気道上皮の幹細胞-ニッチ複合領域 ”NEB”の成り立ちと、維持のための分子制御機構の解明を目的としている。我々はこれまでの研究からNEBの中核である神経内分泌細胞(NE細胞)が、胎児期の気道で分化した後、自らNEB形成領域へ遊走することを発見した。本研究ではNE細胞の走化性の分子実態と、NE細胞がニッチ細胞として幹細胞を維持する分子メカニズムの解明に挑戦する。 本年度は、胎生14.5日目(E14.5)のNE細胞で発現している因子とE18.5で発現している因子の違いを明らかにする目的で、E14.5とE18.5の胎児気道上皮細胞の1細胞トランスクリプトーム解析を行った。E14.5では遊走途中のNE細胞とNEB形成過程であるNE細胞が混在しており、E18.5ではNEBが形成され成熟段階にある。このような発生段階の違いを反映し、E18.5では単一グループになるが、E14.5は2グループに分けられることがわかった。現在、遊走途中と遊走後のNE細胞の発現パターンを比較し、候補となる因子を検索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画ではマイクロアレイを使ったNE細胞のトランスクリプトーム解析を予定していたが、世界の研究動向と所内設備の向上を踏まえ、1細胞トランスクリプトーム解析を行うことにした。その結果、実験系の確立や解析手法の習得に時間をかけることになったが、予定よりも高解像度で精度の高い解析を行うことができた。その結果、候補遺伝子の絞り込みにかかる時間を減らすことができた。現在、数個の候補遺伝子に絞り、解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、 1)走化性の制御因子について単離細胞の培養系とマイクロデバイスの流路装置を使って検索する。NE細胞の走化性と移動様式の詳細を顕微鏡下で観察することで、NE細胞の走化性の実態について細胞生物学的に検証する。これまでの胎児肺リアルタイムイメージングの観察結果により、NE細胞の遊走様式は、これまでの細胞生物学分野で研究されてきた様式とは異なっており、まったく新しい細胞遊走の法則、走化性の分子実態が発見される可能性が高いと考えている。 2)NE細胞がvClub細胞の増殖能、未分化能を維持するメカニズムについて、オルガノイド培養法と遺伝子改変マウスを使って解析する。NEBが幹細胞の誘導に働き、幹細胞の自己増幅に働けば気道オルガノイドは大きくなると考えられる。アゴニストや阻害剤を添加することで、NEB内の幹細胞を維持する分子シグナルを同定する。 3)ヒトiPS細胞からNE細胞を分化誘導し、ヒトNEBのin vitro再構成を行う。マウスで発見した幹細胞ニッチ制御の分子メカニズムのヒトNEBにおける保存性、相違性を検証する。この研究で開発されたヒトiPS細胞由来NEBは、個体-細胞-分子の連動的解析の研究基盤の確立に発展することができる。誘導NEBを使って低分子化合物のスクリーニングを行うことで、新規の幹細胞ニッチ制御因子の検索ができる。
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Research Products
(5 results)