2017 Fiscal Year Annual Research Report
PIP3関連分子異常による原発性免疫不全症の病態解明と新規原因遺伝子同定
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17H04233
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
野々山 恵章 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 小児科学, 教授 (40280961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 耕輔 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (90332626)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小児免疫 / アレルギー / 膠原病 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)PIP3関連分子異常による原発性免疫不全症であるActivated Pi3Kδsyndrome(APDS)の迅速診断法開発:APDSの迅速診断法として、FACSにより患者末梢血B細胞のAKTリン酸化を解析する方法を開発し、簡便かつ迅速にAPDSの診断が可能になった。これにより、患者を集積しその臨床経過について論文化した。 2)APDSにおける免疫不全およびリンパ節腫脹発症機構の解明 a) リンパ球アポトーシスの解明:患者由来Tリンパ球をCD3+IL2で刺激し、アポトーシスが亢進していることを見出した。T細胞免疫不全の原因の1つであると考えられた。 b) FOXO1リン酸化亢進:micro RNAをAPDS患者群で測定し、miR27a-3pが有意に高値を示した。そこでmiR27a-3pがターゲットとする分子であるFOXO1に注目し、APDS患者T細胞でFOXO1のリン酸化の亢進を見出した。FOXO1は転写因子で、PI3K-AKT-S6活性化シグナルによってリン酸化され核外移行することで転写活性が抑制される。このことから、AKTリン酸化により転写因子FOXO1の機能低下が起こり、FOXO1が転写する免疫担当細胞の分化、増殖に関わる様々な遺伝子の発現が低下して免疫不全症が発症すると考えられた。 c) ERKリン酸化亢進:APDS患者由来EB cell lines でERKのリン酸化が亢進していることを見出した。このことがAPDS患者でリンパ節腫脹が起きる事の原因の1つであると考えられた。 3)治療法の検討:APDS患者の造血幹細胞移植の成績をまとめ、論文化した。またデジタルPCRを用いてPI3K変異を解析する事によるAPDS患者の移植後の生着を解析する方法を開発し論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では免疫不全の発症機構を解明する事を目標とし成果をあげた。それに加え、APDSのもう一つの大きな問題であるリンパ節腫脹について、その機構を明らかにする事ができた。 また、迅速診断についても症例を集めて解析する事により論文発表が出来た。デジタルPCRによる移植後キメリズム解析も行い、論文化できた。 当初計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回明らかにしたFOXO1のリン酸化亢進をもとにして、FOXO1で転写されるBim, FasL, TRAIL, BAD, p27Kip1, p130などの分子の発現をAPDS患者で解析し、これらの分子の発現異常により免疫担当細胞の異常増殖、アポトーシス亢進、成熟細胞への分化障害が起こり、その結果、免疫不全を発症することを確定する。 miR27a-3pのFOXO1以外の標的遺伝子の解析と、micro RNAの解析で特異的に高値を示したmiR23a-3p, miR744-5p, miR7114-5pの解析を行う。 以上の研究により、APDSにおける複合型免疫不全発症機序を解明する。 さらにAPDS治療法の開発を行う。APDSは造血幹細胞移植が必要になる重篤な免疫不全症であるが、移植の成功率は高くなく、新規治療法を開発する必要がある。病態から考えて、mTOR抑制剤、Rapamycin、AKTリン酸化阻害剤、PI3K阻害剤が効果があると考えられるため、in vitroで検討する。すなわち、患者Tリンパ球をin vitro で培養し、異常増殖、アポトーシス亢進、AKT/mTOR/S6のリン酸化亢進について、mTOR抑制剤、Rapamycin、AKTリン酸化阻害剤、PI3K阻害剤が抑制する事を指標にして、これらの薬剤の効果を検討する。
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