2018 Fiscal Year Annual Research Report
マウスiPS-卵母細胞培養系を用いた感染性流早産患者の母体遺伝的背景の解析
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17H04237
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
柳原 格 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 部長 (60314415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 克彦 九州大学, 医学研究院, 教授 (20287486)
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 流動研究員 (60599596)
呉 恒寧 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 研究技術員 (80648139)
吉村 芳修 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 研究員 (90771197)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再構築卵母細胞 / 人工卵巣 / 始原生殖細胞様細胞 / ウレアプラズマ / 精子機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ES細胞から分化誘導した始原生殖細胞様細胞をソーティングし、生殖腺体細胞と混合し、人工卵巣の作成を行い卵母細胞の分化過程を顕微鏡下で確認するところまで進んだ。次の段階としては、ウレアプラズマ感染精子を用いて、卵母細胞再構築系で作成した卵母細胞と受精を行う。まず、ウレアプラズマ感染が精子運動機能と関連するのか、否かの双方の意見があり、未だ結論が出ていない。そこで、まずマウス精子に対するウレアプラズマ感染の影響を調べた。ICRマウス精子に、様々な菌量のウレアプラズマ(OMC-P162株)を感染させた。運動性の評価は、Swim-up法並びにSMASを用いて解析した。精子運動性は、感染1時間~3時間で有意に低下した。この低下は菌量依存的であった。高濃度のウレアプラズマを用いた場合は、特に不動精子数が有意に増加した。一方、直進速度、曲線速度、直進性、頭部振幅、頭部振動数には有意な差が認められなかった。電顕及び共焦点レーザー顕微鏡観察の結果、ウレアプラズマはマウス精子の頭部及び中間部に多く付着あるいは侵入していることが示されたが、一部は尾部にも付着している像が観察された。特に高濃度のウレアプラズマを感染させた場合には、多数の精子が凝集塊を形成した。一方、非病原性の大腸菌(JM109)は、マウス精子に付着せず、精子の形態などにも影響しなかった。これらの事から、ウレアプラズマは濃度依存的に精子機能に影響を与えることが示された。これまで報告された男性不妊とウレアプラズマに関する実験系では、ウレアプラズマ濃度の調整が殆どなされておらず、安定した結果が得られなかったと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵母細胞再構築系は、ほぼ研究室内に再現できた。現段階の問題点としては、始原生殖細胞様細胞の分離に余計に2時間以上かかっており、その時間を短縮する事ができれば、より効率的に卵母細胞への分化が可能であると考えている。我々の過去の流産胎盤の検討では、妊娠13週の胎盤からもウレアプラズマが検出されており、かなり早期から感染のリスクは有ると思われるが、卵巣内で既に感染しているのか、否かについての検討はこれまでのところ見当たらない。我々はフィリピン大学と共同で卵巣癌及びコントロールの摘出卵巣におけるウレアプラズマの検出を行った。その結果、フィリピン人の卵巣癌患者で化学療法が奏功した摘出卵巣からウレアプラズマ核酸が検出された(4/8)。正常コントロールとは異なる癌病変である為、今後の検討が必要であるが、ウレアプラズマは精子に感染するのみならず、受精前に卵巣内(卵母細胞)に達している可能性は残されている。 一方、母体の遺伝的背景に関しては、これまで絞り込みを行った候補遺伝子のCRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子破壊を行う為、まずはHeLa細胞を用いた遺伝子破壊を行った。シーケンスで複数の当該遺伝子破壊株を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
卵母細胞再構築系を用いてより多くの卵母細胞の作成を行う。ウレアプラズマ感染精子を用いたIVFを行い、その後胚盤胞までの分化について顕微鏡下にて観察し、受精率や、その後の受精卵のグレーディングを評価し不妊との関連を明らかにする。男性不妊との関連については、今年度の結果でウレアプラズマは量依存的に精子の運動機能を抑制したので、さらに精子における活性酸素種の産生や、より詳細な電顕等の画像解析また、動画の解析を行い明らかにする。人工卵巣における、ウレアプラズマ感染がその後の卵母細胞の発生に影響するのか否か、まずは細胞の形態、卵母細胞の成熟などを指標に解析を始める。以前の解析で、ウレアプラズマは宿主細胞内に侵入する事を見出している。再構築した人工卵巣培養系にウレアプラズマを感染させた場合、卵母細胞内に侵入するのか、あるいは周囲の卵丘細胞などにのみ感染しうるのか実験的では有るが検討する。 母体の遺伝的背景また、卵母細胞再構成系で作成した卵母細胞における遺伝子破壊を試みる。まずはMII卵母細胞に、候補遺伝子の破壊を目的としたCRISPR-Cas9発現ベクターをマイクロインジェクションし、その後IVFにより受精率を調査し、受精卵の発生を観察する。我々は現在20遺伝子程度を候補として抽出しており、これらの機能解析を順次進めることで各遺伝子の受精、あるいは初期発生における役割を比較検討していく。
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Research Products
(14 results)