2017 Fiscal Year Annual Research Report
全身性強皮症におけるB細胞機能異常の包括的解析と治療ターゲットの同定
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17H04239
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 伸一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (20215792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉崎 歩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40530415)
北森 武彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60214821)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強皮症 / 自己免疫疾患 / B細胞 / サイトカイン / マイクロ・ナノデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、全身性強皮症(SSc)におけるB細胞機能異常の解析と治療ターゲットを同定することである。免疫学の発展によりB細胞の役割は単に抗体産生に留まらず、抗原提示や、T細胞をはじめとする他の炎症細胞の活性化や分化誘導、炎症性サイトカインの産生といった多彩な領域に及ぶことが明らかとなっている。自己免疫疾患においても、古くからB細胞は自己抗体産生の担い手であるため、病態の形成や進展に深く関連していると考えられてきたが、B細胞の役割が当初考えられていたよりも複雑であることが示されるにつれて、その重要性はますます大きくなっている。このような背景から近年、自己免疫疾患の治療として、抗CD20抗体を用いたB細胞除去療法が注目を集めるようになってきた。B細胞の除去は、多くの自己免疫疾患で一定の効果を示しているため、B細胞は自己免疫の病態を増悪する、いわゆる「悪玉」のイメージが強かった。ところが最近になって、申請者のグループを含む多数の施設より、新しいサブセットである制御性B細胞の存在が報告され、interleukin-10を産生し抑制性の機能を持つことが明らかにされた。 自己免疫疾患においても、B細胞は重要な役割を果たすことが示唆されており、その中でも自己抗原特異的B細胞が、病態の形成と進展に特に重要であると考えられている。しかしながら、自己抗原特異的B細胞は患者体内に僅かしか存在しておらず、現在までにこれを直接検討した研究はなく、病態に果たす役割は明らかではない。本疾患に関しても自己抗原特異的B細胞と病態との関連は依然として不明である。本研究では、拡張ナノ空間と、これを制御するmicro-nano fluidicsを応用した独自の手法で自己抗原特異的B細胞を単一B細胞レベルで、タンパク質と核酸の両者を含めて包括的に検討し、自己抗原特異的B細胞のSScの病態への関与を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではSSc患者体内に存在する自己抗原特異的B細胞の機能と形質を解析し、広く自己免疫疾患におけるB細胞の役割を明らかとすることを目的としている。具体的には重症型のSScの自己抗原であるトポイソメラーゼI(topo I)に特異的なBCRを持つ、topo I特異的B細胞を抽出し、単一細胞レベルで真にtopo I特異的なB細胞のサイトカイン産生能、転写因子とそのリン酸化状態、表面分子、およびmRNA発現とエピゲノム修飾を、拡張ナノ空間とmicro-nano fluidicsを用いた方法で解析する。B細胞サブセットに関しても同様の検討を行うことにより、病態形成に及ぼす役割を検討する。さらに、ブレオマイシン(BLM)誘発SScモデルを作成し、そこから得られたB細胞を同様の手法で解析することで、BCRの抗原親和性がSScに及ぼす影響を単一細胞レベルにおいてin vivoで解析する。H29年度の研究状況を以下に記載した。 今年度はSSc患者からの自己抗原特異的B細胞抽出を行い、解析を行った。申請者の施設には年間1,000人を超えるSSc患者が来院している。これらの患者から、通常の診療で得られる血液検体から血球分離剤を用いて単核球を分離した。次に抗CD19抗体などのB cell lineage markerと、ビオチン化topo I抗原を用いて、topo I特異的B細胞を蛍光標識し、目的細胞として識別した。CD27などに対する蛍光色素標識抗体を用いてB細胞サブセットを同定し、サブセットごとに分離した状態での解析も行った。具体的な解析手法として、抽出されたB細胞は溶解されて、enzyme linked immune sorbent assay法によって解析を行った。抗原親和性に応じたサイトカイン産生の差違が認められ、病態に関与するものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きB細胞サブセット解析を進めながら、計画通り単一細胞解析へと進む。さらにマイクロアレイ解析やエピゲノム解析を行い、得られたビッグデータの解析を行う予定である。加えてモデルマウスを用いた検討も進めることを計画している。具体的には、BLMを4週間連日マウスの皮下へ投与し、BLM誘発強皮症モデルを作成する。このモデルマウスを用いて以下の解析を行い、SScの病態におけるBCRの役割を検討する。 1) 病理組織学的評価; BLM誘発強皮症マウスにおける線維化を評価する。具体的には皮膚および肺を取り出し、病理組織学的に評価する。免疫染色を用いて浸潤するリンパ球や好中球、マクロファージについても評価する。2) 組織中のmRNA発現解析; SScモデルマウスより得られた皮膚と肺からRNAを抽出し、線維化に関わるサイトカインのmRNA発現をreal time PCR法で測定する。3) 血清中サイトカイン解析; SScモデルマウスの血清中のサイトカイン濃度をELISA法で測定する。4) 血清中自己抗体の解析; SScモデルマウスの血清中の自己抗体の抗体価と免疫グロブリン濃度をELISA法で測定する。5) SScモデルマウスにおける単一B細胞解析; SScモデルマウスから得たB細胞を用いてヒトと同様に単一B細胞解析を行う。マウスの場合はヒトと異なり、B細胞は末梢血のみならず、脾臓、リンパ節、骨髄から得ることが出来る。これによってヒトでは解析不能であった病態の解明が期待される。 自己免疫疾患において自己抗原特異的B細胞については長年注目されながらも、技術的な面から、これまで解析することができなかった。本研究ではこのブラックボックスを新たな技術で解き明かす、極めて独創性の高い研究になることが期待される。
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[Presentation] Distinct B cell cytokine production is determined by B cell autoantigen affinity and is related to its pathogenic role in systemic sclerosis2017
Author(s)
Takemichi Fukasawa, Ayumi Yoshizaki, Satoshi Ebata, Kouki Nakamura, Ryosuke Saigusa, Takashi Yamashita, Yoshihide Asano, Yutaka Kazoe, Kazuma Mawatari, Takehiko Kitamori, Shinichi Sato
Organizer
The 42nd Annual Meeting of the Japanese Society for Investigative Dermatology
Int'l Joint Research
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