2018 Fiscal Year Annual Research Report
Neural basis of subjective and objective well- and ill-being in mood disorders
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17H04244
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自覚 / 他覚 / ウェルビーイング / イルビーイング / 気分障害 / MRI / NIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
気分障害患者を対象に、構造MRIと安静時機能的MRI(rs-fMRI)データ(N=114)を用い、うつ重症度の自覚>他覚の乖離と相関する領域および機能的結合性(FC)を解析した。構造MRI解析では、自覚・他覚の乖離と両側の眼窩前頭皮質および視床の内側核の体積に正の相関、視床の外側核では負の相関を認めた。rs-fMRI解析では、左側頭平面-右Heschl回と左側頭平面-右側頭平面に自覚・他覚の乖離と正の相関を示すFCを認め、左下前頭回-右被殻と右中前頭回-小脳では負の相関を示した。両側眼窩前頭皮質は、先行研究では逆に抑うつ症状と負の相関が報告されている領域であり、本研究結果からはうつの他覚的指標とは異なる自覚的指標に固有の脳基盤が眼窩前頭皮質に存在する可能性が示唆された。また、眼窩前頭皮質は、本研究で同様に正の相関を認めた視床内側核からの軸索投射を受ける領域であり、一方の視床外側核は逆に負の相関を認めたことも含めて、うつの自覚・他覚の乖離と眼窩前頭皮質-視床領域の体積変化との関係性を示唆する結果を得た。 大うつ病性障害(MDD)の患者に関して、全頭型プローブNIRS装置を用いたRSFCの計測数を34名まで増やし、78名の健常者のRSFCとの差異を再検討したところ、MDD群では認知制御ネットワークの一部と考えられる左前頭前皮質背外側部―頭頂葉間でRSFCが低下する所見が再現された。また、45名のMDDの患者を対象として、NIRS装置を用いた言語流暢性課題中の脳血液量変化を縦断的に検討したところ、中前頭回領域の賦活反応性は経時的な変動を認めなかった一方で、右下前頭回領域の賦活反応性は他覚的うつの重症度の変化に伴って経時的に変動しており、同領域が他覚的うつ症状およびその重症度の形成に重要な役割を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
構造MRIおよびrs-fMRIについて、114名の気分障害患者を対象とした解析をすでに終え、眼窩前頭皮質や視床内側核・外側核が、自覚的指標や自覚・他覚の乖離に関与していることを示唆する所見を得ており、予想を上回る成果であると言える。また、言語流暢性課題中を用いたNIRSによる検討では、すでに2時点データを用いた縦断的検討を行っており、想定以上の進捗となった。
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Strategy for Future Research Activity |
初回画像計測に加え、1.5年後のfollow-up計測を引き続き行っていく。 今後のMRI解析の方向性として、健常群を含めた構造およびrs-fMRI解析、FreeSurferを用いたうつの自覚・他覚の乖離と関連する皮質厚および表面積の探索、視床の内部構造に関するより精緻なアトラスを用いた解析の施行などを行い、より詳細に検討していく。 NIRSについては、横断および縦断計測によるデータ数をさらに蓄積し、自覚ウェルビーイング/イルビーイングと他覚ウェルビーイング/イルビーイングと言語流暢性課題中の賦活反応性やRSFCとの関係やその経時的な変化についても検討していく予定である。
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Research Products
(6 results)