2018 Fiscal Year Annual Research Report
がん放射線治療におけるDNA2本鎖切断修復機構選択の役割
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17H04263
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀬尾 雄二 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00302000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 和彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40253984)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線感受性 / がん / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は大きく分けて2つの研究を実施した。 1.DNA2本鎖切断修復機構の選択性を修飾する因子としてPARP (poly(ADP-ribose) polymerase) 阻害薬に着目しており、PARP阻害薬による修復機構選択の変化を定量した。 CRISPR-Cas9酵素を用いて特定部位に人工的DNA2本鎖切断を作成し、切断部位の相同配列を有する蛍光色素発現プラスミドもしくは相同配列を有さないものを細胞内へ導入することにより、蛍光発現率から相対的な修復効率を求めた。PARP阻害薬は相同指向性修復、特に微小相同配列を介した末端接合を抑制した。相同組換え修復へ与える影響は小さく、また非相同末端結合による修復はやや増加する傾向が認められた。変異型Cas9酵素を用いた場合は異なる形状の切断端が形成されるため修復機構の選択が変化する可能性がある。そのため、変異型Cas9酵素を用いた測定も並行して実験を行ったが現在のところ修復機構の選択に野生型と変異型Cas9酵素による違いは示されなかった。
2.DNA2本鎖切断修復機構の選択が放射線感受性への影響を調べる目的で、細胞の包括的なゲノム変異と放射線感受性の関連について検討した。培養がん細胞株における遺伝子変異の種類や量と放射線感受性の間には関連が認められなかった。特にDNA修復機構を含む遺伝子情報に関連する遺伝子群の異常と放射線感受性の間にも関連はなかった。しかしながら、がん関連遺伝子における異常量とがん非関連遺伝子における遺伝子異常量の比が放射線感受性と関連することが分かった。これは遺伝子異常の蓄積が必ずしも放射線耐性を生じるわけではなく、逆に感受性を増加させることがあることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで当初の研究計画に沿い概ね順調に進行している。 本研究の主目的は4種類のDNA2本鎖切断修復機構(相同組換え修復、非相同末端結合、微小相同配列媒介末端結合、一本鎖アニーリング)の選択によりX線照射後の細胞反応がどのように異なるかを調べることである。現在までの研究において、DNA2本鎖切断修復の相対的効率を多種類の培養がん細胞株で測定し、またPARP阻害薬によるその変化について観察した。技術的には大きな問題なく、当初の計画に沿って研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.H29年度、30年度ではCRISPR-Cas9酵素を用いて特定部位にDNA2本鎖切断を作成し、DNA修復効率の測定を行った。H31年度には培養がん細胞に対してX線照射を行い、X線によるDNA2本鎖切断修復後の塩基配列異常を次世代シークエンサーを使用して解析を行う。これによって、X線照射によって(ランダムに)生じたDNA2本鎖切断部位においてどのようにDNA修復がなされたかを分析し、修復機構の選択について推定を試みる。 2.CRISPER/CAS9 system を使用して4種類のDNA2本鎖切断修復機構のノックアウト 細胞を作成する。遺伝子ノックアウトには、非相同末端結合修復には XRCC5 (Ku80)、相同組換え修復には Rad51、微小相同配列媒介末端結合修復はPOLQ (Polθ)、一本鎖アニーリングにはRad52 をそれぞれノックアウトする。これら4種類のノックアウト細胞を用いて、X線照射後の細胞生存率および分割感受性を定量する。
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Research Products
(5 results)