2017 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞を用いた難治性肺疾患に対する肺再生治療の開発
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17H04296
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥村 明之進 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40252647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 正人 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
神崎 隆 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10779060)
川村 知裕 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30528675) [Withdrawn]
舟木 壮一郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50464251)
新谷 康 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90572983)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 再生医療 / iPS細胞 / 脂肪幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患COPDの新たな治療法の開発は急務であり、今回COPDに対する細胞治療を用いた再生医療を考案することを目的とした。今回、COPDに対する細胞治療を中心とした再生医療を考案するために、脂肪幹細胞ADSCおよびiPS細胞に着目し、細胞補充・生着型肺再生法を開発することを計画した。 COPD誘導マウスに対して、健常なマウスよりADSCを分取し、経静脈的、経気管的に投与すると、組織学的に気腫性変化の改善を認め、呼吸機能検査では気道コンプライアンスの改善とガス交換率の改善を認めた。またADSCを肺胞上皮細胞への分化誘導培地で培養すると、分化前には発現していないII型肺胞上皮マーカーの発現を認めた。ADSCはⅡ型肺胞上皮へ分化する可能性があり、肺損傷修復の過程で細胞供給源になる可能性が示唆された。 人工多能性幹細胞iPS細胞を様々な成長因子を用いて肺胞上皮細胞への分化誘導法を検討した。iPS細胞から肺上皮への分化誘導については、確立した方法がないのが現状であり、胚性内胚葉、前方前腸、腹側化前方前腸、II型肺胞上皮への分化について、培養液、添加因子について検討を行った。それぞれの段階でのバイオマーカーを明らかにし、選択的に分化誘導する至適条件を2種類のiPS細胞を用いて明らかにした。さらに。分化誘導した細胞を標識して、上記と同様に肺障害マウスへの移植を施行し、肺胞への生着および呼吸機能の改善を確認した。 肺の再生医療を考案する上で、脂肪幹細胞やiPS細胞が重要なツールになり得ると考えらえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度には、主として、脂肪幹細胞ADSC、分化したiPS細胞補充による肺障害マウスの解析を行った。ADSC補充による肺傷害修復については、現象として一定しており、そのメカニズムや効率の良い投与法を検討していく必要がある。また、iPS細胞から分化誘導した細胞を用いて、疾患マウスモデルへの細胞移植実験を行ったが、未分化細胞の存在による影響を考慮する必要があり、さらに効率のよい分化誘導を細胞種ごとに探索する必要がある。とくに、開発したプロトコールに加えて、未分化細胞を除去するレジュメを追加して行っていく。引き続き、マウスiPS細胞の分化誘導法を検討し、動物への投与実験を行い、肺機能や肺組織に及ぼす影響を詳細に観察する必要がある。 また動物実験に並行して、ADSCやiPS細胞を用いて、各種間質細胞および細胞外器質を用いた共培養系(三次元培養)を確立し、生体内微小環境を再現し、In vitroでの器官形成を再現する試みを行っているが、再現性のある立体構造を構築するための培養法の確立に難渋しており、生体内に近い状況での組織修復・再生のメカニズムの解明を行う実験系の開発には時間を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の引き続き、肺胞再生誘導因子産生細胞種の同定を行う。脂肪由来幹細胞・iPS分化細胞と肺胞上皮を肺障害マウスモデルに経静脈的投与を行い、生着に関与する細胞種を探索してきた。脂肪由来幹細胞では継代数を経ない新鮮な細胞を用いることが重要であり、細胞の継代維持について検討を行っていく。一方、iPS細胞では、腹側化前方前腸まで分化させた細胞(TTF1高発現)とII型肺胞上皮までの分化を行った細胞を比較した場合、前者での生着率が有意に高いことがわかった。今後も分化の程度による効果の相違を検討し、前駆細胞を用いる有用性を明らかにする。また細胞生着後の肺胞再生を、採取した肺組織、動脈血液ガス、小動物呼吸機能、小動物CT、換気血流シンチ、超偏極129Xe-MRIを用いて評価し、肺再生に適した投与量、投与時期、投与法を検討する。 臨床応用を目指した細胞シート作成:シート移植後に呼吸機能検査や肺胞の構造、組織解析を行う。また動物イメージング装置によって肺換気血流を測定する。上記基礎実験から、肺胞再生に適した最適な脂肪幹細胞シート・肺胞前駆細胞シートの作成を試みる。また、細胞治療の安全性を評価するため、大動物を用いた安全性評価を行う。 iPS細胞由来細胞の安全性、有効性の検証:脂肪幹細胞・iPS由来細胞を用いた造腫瘍試験や慢性毒性併合試験等によって安全性を試験する。また、生体イメージにより腫瘍形成を検出する技術を開発する。iPS由来細胞が肺胞上皮へ分化し生着する挙動を可視化する(ミクロ・イメージング)。さまざまなモデルマウスを用いて幹細胞由来細胞の生体投与による変化を解析する。
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Research Products
(2 results)