2018 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary research on intraperitoneal cell-to-cell crosstalk focusing ovarian cancer-associated mesothelial cells
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17H04338
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梶山 広明 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (00345886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 史朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20612758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 腹膜播種 / 癌関連腹膜中皮細胞 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌の癌性腹膜炎の克服において、卵巣癌(種)だけではなく腹膜微小環境(土壌)を一体化するとの考えを基に、腹腔内全体を一つの包括的環境基軸と見なし、「卵巣癌-腹膜中皮間の細胞コミュニケーション」に着目した新規卵巣癌進展の機序を明らかにすることを目的とした。 本年度の研究成果にて、卵巣癌関連腹膜中皮細胞が改変する細胞外基質が、卵巣癌細胞のプラチナ耐性を誘導していることを解明した。 一方、卵巣癌細胞は治療抵抗性や晩期再発などを呈する難治性腫瘍の一つであるが、それらの機序には、癌細胞のStemness維持や休眠が関与しているとされている。我々は、卵巣癌関連腹膜中皮細胞と卵巣癌との細胞間コミュニケーションを別の角度から捉え、共接合によるシグナル伝達を特徴とするNotchシグナルに着目した。本年度の研究結果より、卵巣癌関連腹膜中皮細胞の提示するNotchリガンドの一つであるDLL3が、卵巣癌細胞のNotch3受容体を介して、一部の癌細胞におけるNotchシグナルを活性化し、腫瘍内極性を生み出すことを見出した。また、Notchシグナル活性化癌細胞では、非活性化細胞と比較して、細胞周期は遅延し、Stemnessを示すマーカー発現の上昇を認めた。さらに、強制発現系において、Notchシグナル活性化癌細胞の存在下では、非存在下に比較して、腫瘍スフェロイド形成能が格段に上昇することが判明した。これは、卵巣癌関連腹膜中皮細胞が生み出す、Nocthシグナルを介した卵巣癌細胞内の極性、すなわち不均一性が、腫瘍全体の悪性度を高め、また一部の癌細胞においてはStemness維持や休眠に関与するという、腹膜播種における臨床病態と合致する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣癌関連腹膜中皮細胞との共培養により、Notchシグナルを介することで、一部の癌細胞に幹細胞性が誘導され、休眠を促す結果が得られた。本研究の目的の一つである、「卵巣癌関連腹膜中皮細胞が卵巣癌の“Stemness”の維持、“Tumor dormancy状態”に及ぼす影響の検証」を概ね達成することができたと考える。今後、更なる検証を重ねることで、新規治療標的の探索にまで視野を広げ、本領域に刷新的な研究領域を見出すことを期待する。 また、「卵巣癌関連腹膜中皮細胞が腫瘍細胞のインターカレーションを誘導する分子メカニズムの解明」に関しては、卵巣癌細胞のFascinとMyosin Xの相互関係を基軸とした、腹膜への浸潤を解明し、検証を重ねて論文投稿を完了した。本研究成果は、分子生物学的機序の一端を解明したことに留まらず、顕微鏡を用いた詳細な細胞イメージング技術を駆使して、卵巣癌腹膜播種における動物実験手法を確立したことにある。 更に、当初の目的の一つであった、「臨床検体に基づく卵巣癌関連腹膜中皮細胞/癌性腹膜炎誘導因子を探求するための網羅的解析」においても、先に示したNotchシグナルを基軸とした卵巣癌関連腹膜中皮細胞と卵巣癌との細胞間コミュニケーションとそれに伴う癌細胞内の極性を標的に、メタボローム解析を行う準備を整えた。具体的には、動的に変動し得る癌細胞内のNotchシグナルを、ゲノム編集技術を用いて、より細胞への負の影響を少なくしつつ可視化することに成功した。 総じて、本年度の研究により、「全体として“Occult metastasis”、多発腹膜播種形成、そして癌性腹膜炎にいたるメカニズムを解明し、癌・腹膜の双方向性分子標的の可能性を追究する」という本研究計画の根幹を、昨年度に引き続いて具体的に明らかにすることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果を、より具体的な成果へと昇華させるべく研究を推し進める。 第一に、卵巣癌-腹膜中皮間の細胞コミュニケーションにおける、卵巣癌関連腹膜中皮細胞が発現するファイブロネクチンと卵巣癌プラチナ体制獲得機構に関する研究結果の検証を行う。昨年度までに、細胞株等を用いたメカニズムの検証は実施済みであり、本年度は主に、イメージング技術を用いた動物モデルでの実験を主とする。本研究内容は、癌関連腹膜中皮細胞が、卵巣癌細胞の悪性化を促すことを発見し、具体的な分子やシグナルなどの詳細な分子生物学的機序を解明した初の結果を含むものであり、次年度中の論文化を目標とする。 また、上記課題に関連した、癌関連腹膜中皮細胞が織り成す、Nocthシグナルを介した卵巣癌細胞内の不均一性とStemness維持・休眠に関する研究においては、ゲノム編集技術を用いて樹立した、Notchシグナルを可視化できる細胞株を用いて、実験結果の検証と、動物モデルを用いた新たな機序の同定を試みる。更に、新規メカニズムの解明と、治療標的の探求を目的として、メタボロームを含めた網羅解析を実施する。 更に、現在投稿中の課題である、FascinとMyosin Xの相互関係を基軸とした腹膜への浸潤腹膜における卵巣癌細胞のインターカレーションにおける研究成果から派生した、卵巣癌腹膜播種における動物実験モデルやイメージング技術を、他の研究課題にも応用し、包括的な理解を深めることができるよう、手技手法の確立に努める。 もし、上述の研究の一部が計画通りに進まない場合においては、先に提示した計画書に準拠して、癌関連腹膜中皮細胞による薬剤耐性獲得の有無、細胞外マトリックスのリモデリング、局所線維化とそれに伴う炎症と組織脆弱性、さらに血管新生に与える影響など、他の癌性腹膜炎化に関与する機能研究に適宜切り替えて、研究を遂行する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Comparison of long-term oncologic outcomes between metastatic ovarian carcinoma originating from gastrointestinal organs and advanced mucinous ovarian carcinoma.2019
Author(s)
Kajiyama H, Suzuki S, Utsumi F, Yoshikawa N, Nishino K, Ikeda Y, Niimi K, Yamamoto E, Kawai M, Shibata K, Nagasaka T, Kikkawa F.
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Journal Title
Int J Clin Oncol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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