2017 Fiscal Year Annual Research Report
Epstein-Barrウイルスによる細胞老化関連分泌形質誘導機構の解明
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17H04343
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
脇坂 尚宏 金沢大学, 医学系, 准教授 (70377414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉崎 智一 金沢大学, 医学系, 教授 (70262582)
近藤 悟 金沢大学, 附属病院, 講師 (70436822)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Epstein-Barr ウイルス / 細胞老化 / 細胞老化関連分泌形質 / ミトコンドリア / 上咽頭癌 / 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
上咽頭癌組織標本について、細胞老化の指標としてp16蛋白の免疫染色を行った。腫瘍細胞では概ねp16蛋白の発現は陰性であったが、僅かにp16を発現している腫瘍細胞と間質細胞を認めた。上咽頭癌の腫瘍細胞ではp16が陰性であることが通説であるが、間質細胞と腫瘍細胞の一部でp16発現細胞を認めたことは、これらが細胞老化を来していることを示唆する結果であり、腫瘍組織におけるOncogenic Niche Cellが仮説通りに存在する可能性を示している。 さらに、ミトコンドリアにおける活性酸素種代謝能を推定するため、上咽頭癌組織におけるスーパーオキシドディスムターゼ (Superoxide dismutase, SOD)-2蛋白・Mcl-1蛋白の発現について検討した。その結果、腫瘍細胞ではSOD-2の発現が増加しており、活性酸素種代謝は均一に亢進していると考えられた。一方、口腔癌など酒・たばこ発癌では、SOD-2蛋白の発現すなわち活性酸素種代謝が細胞によってそれぞれ異なることが判明した。 上皮細胞・正常線維芽細胞では、活性酸素種への暴露によっては細胞老化関連分泌形質(senescence-associated secretory phenotype, SASP)は誘導されなかった。EBV-LMP1を発現させた上皮細胞と正常線維芽細胞を共培養しても、同様にSASPは誘導されなかった。SASP誘導がミトコンドリア障害を前提とした現象であるとすれば結果は妥当であり、今後、ミトコンドリア障害がある細胞を用いることで本研究の目的であるSASP誘導機構の解明に迫る研究プロセスとして順調である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫染色や上皮細胞・線維芽細胞の共培養など実験は予定通り進捗している。本年度に得られた結果も想定されたものであり、1年間の成果としては順調と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞老化マーカーとしてSAβ-Gal染色やSMA免疫染色など、p16免疫染色以外にも実施する。上咽頭癌腫瘍組織では細胞老化現象が実際に起っていることの傍証として、上咽頭癌組織でのデータをさらに積み上げる。細胞老化を来した腫瘍・間質細胞周囲の腫瘍細胞における癌幹細胞マーカーの発現を検討し、Oncogenic Niche cell理論の検証も併せて進めていく。 上皮細胞と線維芽細胞の共培養では、上咽頭癌由来の線維芽細胞を用いて、研究を継続する。上咽頭癌組織由来の線維芽細胞であれば、ROSによる刺激や共培養によりSASPが誘導される可能性が高く、ミトコンドリアDNA解析で障害がある細胞を選択的に使用すればSASP誘導の実験系を早急に確立することが可能と思われる。 上咽頭癌と同じく頭頸部のウイルス発癌であるヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連中咽頭癌でも同様の実験系を活かせるため併行して研究を行い、研究の視野をさらに拡げて充実させていく。
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Research Products
(17 results)