2019 Fiscal Year Annual Research Report
Epstein-Barrウイルスによる細胞老化関連分泌形質誘導機構の解明
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17H04343
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
脇坂 尚宏 金沢大学, 医学系, 准教授 (70377414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉崎 智一 金沢大学, 医学系, 教授 (70262582)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | EBV / HPV / 細胞老化 / 活性酸素種 / SOD2 / シチジンデアミナーゼ / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、上咽頭癌のみならず中咽頭癌にも研究対象を拡げ、頭頚部癌のウイルス発癌および転移機構の解明という視点で研究を発展させた。中咽頭癌では癌細胞からROSが発生していることが確認され、また、SOD2の発現低下とROSの発生が相関していることが判明した。上咽頭癌と同様、ダブルチャンバーによる実験系ではROSに暴露した細胞におけるミトコンドリアDNAの変異は確認できなかった。ただし、、実際の腫瘍サンプルについて次世代シークエンサーによりミトコンドリアDNA変異を解析した結果、腫瘍上皮部分と腫瘍部分ではシチジンデアミナーゼならびにSOD2が関与する変異が認められ、変異を有する症例では転移が進行する傾向を認めた。HPV関連中咽頭癌においてもSASPが発生していることは容易に確認できた。ただし、上咽頭癌と同様EBV 感染上皮細胞が近傍の正常細胞の細胞老化を誘導する過程をタイムラプス顕微鏡で可視化して観察することができなかったのは残念である。今後は実験系の工夫を要すると考えられた。 上咽頭癌に関する研究中、LMP1の発現によりシチジンデアミナーゼの発現が促進され、ミトコンドリアDNAの変異が誘導されていることが判明した。さらにその結果、リンパ節転移が促進していることが臨床検体で確認できた。今後は研究対象をSOD2のみならずシチジンデアミナーゼによる作用にさらに拡げて行きたい。一方、LMP1を発現している細胞がROSを産生することは容易に確認できた。 このように、頭頚部癌のウイルス発癌・転移機構ではミトコンドリアが何らかの形で関与していることを示し得たことは大きな成果であった。 ミトコンドリアDNAの変異と癌の転移傾向の間には相関を認めながら、シチジンデアミナーゼの発現が亢進している細胞では上中咽頭癌ともに転移を来す傾向があった。細胞の上皮間葉移行や浸潤・転移因子の発現が関与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象を上咽頭癌から中咽頭癌のウイルス発がん全体に拡げ、期待した結果が得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
タイムラプス顕微鏡によるSASP発生の観察研究からはいったん撤退し、ダブルチャンバーを用いた研究に資源を集中する。さらにROSの発生に続く転移発生機構の解明について、SOD2の発現低下に加え、シチジンデアミナーゼ発現亢進にエフォートを集中してそれらの発現調節機構をEBV・HPVに絡めて研究を進める。具体的にはPromoterのメチル化やNF-kBによる転写促進が候補であり、仮説に基づいて研究を進める。 細胞老化の誘因の可能性が高いミトコンドリア障害についてその機構を解明するため、ROSによる上皮・線維芽細胞のミトコンドリアDNA変異導入の程度と細胞老化・SASP誘導の頻度の相関性についても引き続き評価する。明らかにシチジンデアミナーゼの発現の亢進と癌の転移能・SASP化能は相関することから、シチジンデアミナーゼの発現調節機構の解明と、その転移抑制機構・SASP化機構についても併行してさらに解析を進めていく。
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Research Products
(12 results)