2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H04362
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本多 伸一郎 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 客員研究員 (60360640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 聡子 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 講師 (20360589)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症は病原体感染により引き起こされる全身性炎症反応症候群である。敗血症の治療を行う上では病原体の排除を行いつつ過剰な炎症応答を回避するという緻密な制御が必要とされる。自然免疫応答は感染防御の最前線を担い、炎症の誘導に働くことから、自然免疫応答の活性化制御機構を明らかにすることは敗血症の病態の理解と人為的制御法の開発において重要である。アラジンー1は肥満細胞や骨髄系細胞などの自然免疫応答を担う細胞に発現し、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜型受容体であり、細胞内領域に抑制性シグナルを伝達するITIMアミノ酸配列を持つ。アラジンー1は肥満細胞ではIgE受容体やTLR2受容体のシグナル経路を抑制することにより、生体では全身性および局所アナフィラキシーや皮膚炎を抑制するアレルギー抑制分子として働く。アラジンー1がTLR2シグナルを抑制することから、アレルギー応答以外に感染症における役割を明らかにするため、盲腸結紮穿刺法(Ceacum ligation and puncture, CLP) による腹膜炎モデルを検討した。その結果、野生型マウス(WT)がCLP後72時間で全例死亡するのに対し、アラジンー1欠損マウス(KO)では約50%のマウスが生存し、生存率が有意に亢進した。しかし、腹腔中の細菌数に有意差はなく、腹腔に浸潤する好中球および炎症性単球数にも有意差はなく、量的な違いは見出されなかった。しかし、炎症性サイトカインを定量解析したところ、IL-6およびTNFなど炎症性サイトカイン産生はKOの腹腔中で有意に低く、逆に抗炎症性サイトカインであるIL-10産生はKOで有意に亢進していた。以上の結果から、アラジンー1を欠損すると、細菌の排除に影響を与えることなく、炎症のみを抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹膜炎モデルにおいて、アラジン1が欠損すると細菌の排除に影響与えることなく、抗炎症性サイトカイン産生の亢進、さらに炎症性サイトカイン産生の低下が観察された。この結果から、アラジンー1の機能を阻害抗体など用いて人為的に阻害することで、細菌排除に影響を与えることなく、抗炎症反応を亢進して炎症反応を抑制して敗血症の病態を改善できる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はIL-10産生の亢進が病態に関与するかを抗IL-10抗体を用いて検証し、IL-10産生細胞をフローサイトメトリー法で検証する。また、アラジンー1が抑制するシグナル経路を解析し、IL-10産生をinvitroで解析する。すでに樹立ずみの抗マウスアラジンー1抗体は敗血症モデルで治療効果を示さなかったため、新たに抗アラジンー1抗体産生ハイブリドーマを樹立し、治療効果を検証する。
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Research Products
(5 results)