2019 Fiscal Year Annual Research Report
敗血症性脳症の非侵襲計測と分子病態の統合解析による積極的治療介入の再考察
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17H04364
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
今村 行雄 同志社大学, 研究開発推進機構, 学術研究員 (90447954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 裕司 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10791709)
村上 由希 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (50580106)
小倉 裕司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70301265)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 敗血症性脳症 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症などにより引き起こされる敗血症は救急医療・集中治療における重要な疾患である。重症敗血症の生存者はせん妄、意識障害、高度認知障害などを主症状とする敗血症性脳症に移行し、本人、家族、医療従事者にとって非常に大きな負担となる。敗血症性脳症においては積極的な治療介入方法はなく対症療法が主となるため、世界的な社会問題となっている。前年度では敗血症性脳症における非侵襲的なコリン性抗炎症経路賦活化療法の効果を光イメージング、および疾患分子の統合解析を行い、一定の治療介入効果があることが示唆された。本年度では、実際に症状の改善効果があるかどうかを検討した。マウスの行動、体温などをリアルタイムに計測できる計測チップをマウスの体内に埋め込み、治療介入効果がどのように生理的パラメータに影響するかを検討した。コントロール群における状態を検討したところ、ナノタグを皮下に埋め込んだマウス群は体温36-37℃、活動量300-400を示した。次に病態群を検討した。敗血症を誘導すると、体温は顕著に低下し、行動量は1/100に低下、誘導後20時間で死亡が確認された。最後に2種類の治療介入群の検討を行った。すなわち敗血症の誘導後、1時間後(全身炎症は誘導されるが、脳症ではない)、18時間後(脳症に相当)に治療介入を行った。1時間後に治療介入を加えた群では体温の2-3℃の上昇、1日の生存が認められたが、それ以上の回復効果は認められなかった。一方、18時間後に治療介入を加えた群では体温および行動量は徐々に回復し、3日後には体温33-34℃、活動量100-200まで回復した。以上の結果から本治療介入方法は敗血症性脳症発症後の生理的パラメータを回復する効果があることが示唆される。現在、例数を増やして統計的な変化を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では検討課題として1. 光イメージング、2. 分子病態の統合解析、3. 脳機能の回復メカニズムの検討を加えるというものであった。本年度は3年目であるが順調に3番目の検討課題の検討に入り、有意な結果が得られている。以上のことから本研究課題の進行は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、コロナの影響により研究室における新規の研究自粛を余儀なくされている。この状況に鑑み、上半期と下半期にわける。上半期では研究室の外でも作業可能な測定システムの構築およびモデル実験の試行を行う。具体的には脳活動測定用のデバイスの作成およびシステム構築を行い、測定可能かどうか検証する。下半期には実際に動物実験を行い、治療介入による変化が脳機能の改善に関わるのかどうかを検討する。治療介入方法が免疫系の改善および脳機能の回復にどのように働くのかについて洞察を加える。
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Research Products
(2 results)