2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04377
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 俊之 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (80142313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プロトンポンプ / 知覚神経 / TRPV1 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)がん性骨痛の分子メカニズムの解明と、そのメカニズムに立脚したがん性骨痛の薬物的抑制を試みた。 乳がん細胞はWarburg効果により大量のプロトンを産生し、液胞性プロトンポンプを通じて細胞外に分泌することが示された。またプロトンポンプ阻害剤バフィロマイシンA1は、in vitroにおいてCa2+流入を指標とする知覚神経細胞の興奮および細胞内シグナル分子ErkとCREBのリン酸化を指標とする腰椎後根神経節の活性化、ならびに担がんマウスでの熱性痛覚過敏および機械的知覚過敏を指標とするがん性骨痛をそれぞれ抑制した。 乳がん細胞から分泌されたプロトンに応答する酸感受性受容体として、Transient Receptor Potential Vanilloid 1 (TRPV1)が知覚神経に発現し、乳がんの増大に伴ってTRPV1 の発現が増加することが示された。またTRPV1選択的拮抗剤SB366791は、in vitroにおいて知覚神経細胞の興奮、ならびに腰椎後根神経節の活性化、さらに担がんマウスでのがん性骨痛をいずれも抑制した。 2)乳がんの増大により興奮し、骨痛を誘発する知覚神経が乳がんの進展、ならびに骨からの二次転移におよぼす影響について検討した。 マウス腰椎後根神経節の器官培養系、ならびに初代後根神経節知覚神経細胞培養系、さらに後根神経節知覚神経細胞様細胞株50B11の培養系を確立した。これにより乳がん細胞との共培養により、がん細胞の増殖や運動性に対する知覚神経細胞の影響の検討が可能となった。乳がん細胞を脛骨に接種することにより3-4週後に肺転移を示すマウスモデルを確立した。これにより骨から内臓臓器への二次転移のメカニズムについて検討が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に樹立したがん性骨痛のモデルを活用し、乳がん細胞からプロトンポンプを通じて分泌されるプロトンが知覚神経の酸感受性受容体TRPV1を刺激することにより知覚神経を興奮させ骨痛を誘発することが示され、がん性骨痛の分子メカニズムの一端を明らかにした。さらにプロトンポンプ阻害剤、あるいはTREPV1拮抗剤によりがん性骨痛が抑制されることを示し、がん患者においてがん性骨痛を緩和するアプローチ開発のための足掛かりを提供した。また、骨でがんが増大し、その後肺への転移を示すマウスモデルを確立し、がんの二次転移に対する知覚神経の影響の検討を可能とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度および30年度の研究により、がん細胞がプロトン産出により骨内に造りあげる酸性環境が知覚神経上の酸感受性受容体TRPV1を活性化し、知覚神経を興奮させて骨痛を誘発することが示された。また、プロトンポンプ阻害剤、あるいは、TRPV1拮抗剤を用いてプロトン応答性を妨害すると骨痛が緩和されることを明らかにした。 今後は、がんが造りあげた酸性環境により興奮した知覚神経から産出され、傍分泌性にがん細胞の進展に影響する因子の同定と、その因子ががん細胞の増殖、浸潤、ならびに転移に対して及ぼす作用について検討する。がん進展と骨痛との悪循環の分子基盤を明らかにすることにより、がん患者の生存率を大きく低下させる主要な要因の一つとなっている神経周囲浸潤(Perineural Invasion, PNI)の病態に対する理解が深まり、がん患者の予後改善とがん治療成績の向上をめざすための足がかりとする。 具体的な研究計画は、①がんが造りあげた酸性環境により興奮した知覚神経において発現が高まる因子を同定する。②同定した因子ががん細胞の増殖、浸潤、ならびに転移に対して及ぼす作用について検討する。③TRPV1活性化による知覚神経の興奮を抑制した場合のがんの進展、転移を検討する。 以上の実験により、がんの存在により興奮し、痛みを発する知覚神経は、がん増殖因子を産出することによりがん細胞の増殖、運動性、そして転移を高めることが明らかとなる。本研究によりがん性疼痛は、精神的のみならず、生物学的にもがんの進展、転移を増悪させ、がん患者の予後および生存率を低下させることがしめされる。したがって、TRPV1拮抗剤によるがん性疼痛の制御は鎮痛効果以外にも、抗がん効果も期待でき、がん患者のマネージメントに新たなアプローチをもたらす。
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[Journal Article] Japanese expert panel meeting for the management of prostate cancer with bone metastases.2018
Author(s)
3.Takahashi S, Kinuya S, Nonomura N, Shinohara N, Suzuki K, Suzuki H, Nakamura K, Satoh T, Tateishi U, Yoneda T, Horikoshi H, Igawa T, Kamai T, Koizumi M, Kosaka T, Matsubara N, Miyake H, Mizokami A, Mizowaki T, Nakamura N, Nozawa M, Takahashi T, Uemura H, Uemura M, Yokomizo A, Yoshimura M, Kakehi Y.
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Journal Title
Oncol Therap
Volume: 6
Pages: 157-171
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Effects of denosumab, a subcutaneous RANKL inhibitor, on the progression of structural damage in Japanese patients with rheumatoid arthritis treated with csDMARDS: Result from the long-term treatment of phase 3, DESIRABLE study.2018
Author(s)
Takeuchi T, Tanaka Y, Soen S, Yamanaka H, Yoneda T, Tanaka S, Nitta T, Okubo N, Genant H, van der Heijde D.
Organizer
Annual European Congress of Rheumatology
Int'l Joint Research