2017 Fiscal Year Annual Research Report
組織マクロファージによる歯髄微小環境調節機構の解明と歯髄組織再生法の開発
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17H04400
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 禎 日本大学, 歯学部, 准教授 (00360222)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
細矢 明宏 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (70350824)
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (70733509)
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80401214)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 歯髄 / 修復象牙質 / デンティンブリッジ / Wntシグナル / 歯髄再生療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの上顎第一臼歯にラウンドバーにて窩洞形成し、露髄後MTAセメントにて直接覆髄後1日、4日、7日、14日、28日の試料を用いてパラフィン切片を作製し、Wnt3a、Wnt10a、β-cateninの局在を免疫組織化学的に解析した。また、デンティンブリッジ形成過程におけるマクロファージの関与を明らかにするためにF4/80陽性細胞の分布を検討した。 直接覆髄後1日のマウス歯髄では窩洞形成の刺激により覆髄部直下の象牙芽細胞は壊死しており、その周辺の象牙芽細胞にWnt3a、Wnt10aの弱い陽性反応を認めた。直接覆髄後4日、7日では覆髄部周囲の象牙芽細胞がWnt3a、Wnt10aの陽性反応を示すとともに、象牙芽細胞の核にβ-catenin局在が認められた。直接覆髄後14日では覆髄部周辺に修復象牙質が形成されており、その表面に配列した修復象牙芽細胞はWnt3a、Wnt10a陽性反応を示し、その核にはβ-catenin局在が認められた。また、露髄部周囲と歯髄中央部にはMTAセメントを取り込んだ大型のF4/80陽性マクロファージが多数観察され、これらの細胞にWnt10a陽性反応が認められた。直接覆髄後28日のマウス歯髄では覆髄部直下にデンティンブリッジが形成されており、その表面に接した修復象牙芽細胞にWnt3aとβ-cateninの陽性反応が観察された。 以上のことから、修復象牙芽細胞の分化に古典的Wntシグナルが関与することが明らかになった。また、直接覆髄後初期の修復象牙芽細胞分化には、象牙芽細胞由来のWntが重要であると考えられた。一方、直接覆髄後14日では露髄部周囲と歯髄中央部のマクロファージがWnt10aを発現していたことから、後期においては象牙芽細胞に加え、マクロファージ由来のWntが修復象牙芽細胞分化に関与しているとが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス臼歯を用いた直接覆髄モデルを実体顕微鏡下で行うことにより、その術式を確立し、マイクロCTとHE染色による組織学的な検討とWnt関連分子の免疫組織学的な解析を行った。M1およびM2マクロファージのマーカーCD163、CD206に対する市販の抗体は、パラフィン切片で検出する免疫組織化学的検討には不適切であり、広範なマクロファージを認識するF4/80で検出した。MTAセメントを取り込んだマクロファージにWnt10a局在がみられたことはデンティンブリッジ形成過程において、マクロファージがWnt10aを発現することにより、修復象牙質形成に深く関わっていることが明らかとなった。この現象についてはこれまで報告がなく、新知見であり今後の歯髄保存療法に多くの示唆を与えるものである。 これらの知見をもとに、直接覆髄後の歯髄組織からmRNAを回収してWnt関連遺伝子の発現をreal-time PCRにて試みているが、明確な結果は得られていない。また、臼歯歯髄からマクロファージを採取し、in vitroでのWnt10a発現を検討する計画であったが、歯髄組織から得られる細胞数が僅かであり、in vitro解析を行うことは困難であると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスでの直接覆髄の実験系が確立できたことから、デンティンブリッジ形成に関わる歯髄細胞の系譜解析をGli1-Cre-ERT2-TomatoマウスおよびGli1-GFPマウスを用いて解析する。また、マクロファージがWnt10aを発現するメカニズムについて明らかにするために、in vitro系実験として骨髄からマクロファージを分離あるいは株化マクロファージを用いて、さまざまな刺激を加えることによりWnt関連分子の発現変化が生じるかについて検討する。さらに、歯髄細胞の培養系においてWnt添加実験およびWntシグナル阻害剤を用いて、象牙芽細胞分化との関連について明らかにするとともに、直接覆髄剤としてのWntシグナルを活性化する低分子化合物についても検討する予定である。
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