2018 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン棚田群の劣化プロセスの解明と水文学的将来予測による最適環境管理
Project/Area Number |
17H04484
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森 也寸志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80252899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗村 広昭 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90403443)
辻本 久美子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (80557702)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 棚田 / フィリピン / 土壌劣化 / 世界遺産 / 衛星データ |
Outline of Annual Research Achievements |
フィリピン北部にあるコルディリェーラの棚田群では棚田の崩壊が深刻化しており,崩壊を中心とした諸問題に対応するための適切かつ効率的な営農管理が求められている.既往研究によれば棚田を含む斜面崩壊地域での短期的な地下水位変動には田面からの浸透が支配的である.そのため,田面からの浸透量が増加すれば,棚田が崩壊する可能性が高まる.そこで本年度は棚田群の土壌特性と鉛直方向の浸透現象との関係を明らかにした. 初年度の現地踏査に基づき,Banaue近くの3つの棚田,Banaue, Bangaan, Hapaoで調査を行った.Banaueは復興棚田が多い地域,Bangaanは棚田中腹に集落がある地域,Hapaoは最も傾斜が緩く畦が整備されているところ,という特徴を有する.すると浸透量の低下がいくつかの圃場で散見された.また貫入式土壌硬度計では十分な硬度が観察されない圃場も散見された.透水性の解析と土壌の化学分析を行うと,透水性と有機物量に有意な関係があり.浸透量低下の原因は耕盤形成と有機物類の目詰まりが考えられ,耕盤が認められない棚田のほうが有機物量は多いことが明らかになった.また,耕盤の認められない棚田では交換性陽イオンの溶脱が確認されたことから,還元状態の発達が推定された.養分の溶出につながっており,水田管理としては防止したい案件が明らかになった.棚田群での浸透抑制には耕盤形成による土壌の締固めと有機物類の目詰まりの2種類があり,土壌栄養の観点を踏まえると耕盤形成が必要であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査が継続し,現地での浸透調査および持ち帰った土壌試料の分析から,現地で発生している水・物質移動の特徴を捉えることができ,それが棚田構造の劣化の一要因となり得ると予想されたから.
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Strategy for Future Research Activity |
現地訪問を再度実現し,調査と試料分析を行い,上で考察されたことを踏まえて,どのように少人数で長期間維持可能な棚田保全に結びつけることができるのかを模索する.
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Research Products
(5 results)