2018 Fiscal Year Annual Research Report
International Migration Policies and its impact on the Migrants-Refugees from the Middle East
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17H04504
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
錦田 愛子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70451979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森井 裕一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00284935)
高岡 豊 東京外国語大学, その他部局等, 非常勤講師 (10638711)
今井 宏平 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 研究員 (70727130)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移民/難民 / アラブ / 政治学 / 政策協調 / ドイツ / トルコ / 学際研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中東地域からヨーロッパ諸国へ移動した20世紀半ば以降のアラブ系移民/難民を対象に、彼らの移動と国際的な政策協調の相関関係を明らかにすることを目的とする。中東地域とヨーロッパ諸国の双方で調査を行ない、移動の実態と政策が互いに与える影響に着目するのが特色である。研究代表者は本年度、本研究課題を基課題とする国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)により、ドイツでの長期在外研究を行ったが、その期間中に並行して、本課題にかかわる研究にも取り組んだ。ドイツを中心とした国際政策協調については、代表者がドイツでの研究拠点とするベルリンのフンボルト大学移民統合研究所(BIM)の研究者らと意見交換を行いながら、資料調査を継続的に実施した。今年度はドイツを含めたEU諸国全般で、「難民危機」後の移民/難民受け入れについて批判的な動きが高まり、政権支持に影響を及ぼすなどしたため、政策協調をめぐる重要な転換期を観察することができた。 またベルリン市内では、パレスチナやシリア出身の移民/難民の移住および適応過程について、研究分担者らとともに現地調査を行った。ドイツ在住のアラブ系移民/難民は、経由地として紛争地の周辺アラブ諸国を通過して来るのが通例である。こうした移動の過程や移動後の状況に、国際政策協調が与える影響については、通過国であるトルコおよびレバノンでの受け入れ状況を詳細に把握することが必要である。そのため本年度は、トルコ国内各都市とレバノンのベイルート市内でも現地調査を行った。これらの地域では、集住地区に住む難民の調査のほかに、支援に携わるNGO関係者への聞き取り調査を行った。調査には研究代表者だけでなく、研究分担者および研究協力者も参加し、それぞれの専門性を生かした充実した共同研究を遂行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究代表者が長期在外研究に出ていたため、日本国内での研究会は開催していない。それに代わり、中長期的な現地調査をドイツ、レバノン、トルコで実施することができた。またこうした研究の進捗状況を踏まえ、本年度は活発に研究報告も既に進めている。ドイツでは9月に所属先のフンボルト大学で、研究代表者が企画責任者となり、日本から3名の研究者を招聘して国際ワークショップを開催した。またレバノンでは11月に、研究代表者の所属先である東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の海外研究拠点JaCMES(中東研究日本センター)において、移民/難民に関するラウンドテーブルを開催した。さらに大宮で11月に開催された国際政治学会年次大会では、研究分担者および昨年度本研究課題で開催した研究会に参加した研究者が報告者となり、研究代表者がコメンテーターを務める分科会を企画し、研究成果に基づく報告と議論を行った。またオーストラリアのブリスベンで7月に開催された世界政治学会(IPSA)では、研究代表者は司会兼コメンテーターとして、研究分担者は報告者として参加し、これまでの研究成果を他の参加者との間で共有し、議論を深めることができた。 これらの公式な研究成果公開の機会の他に、研究代表者は本年度、移民/難民の受け入れ状況や関連した政治状況について、各国で関係者との意見交換も行っている。7月にタイで日本大使館関係者と面談した他、2~3月にはイスタンブールやパリ、ブリュッセルで大学関係者と研究交流を進め、各国の状況についての理解を深め、比較の視点から発展的考察のための知見を得た。これらの成果を上げたことにより、本研究は本年度、予定以上の進展を遂げたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究代表者の帰国を受けて、国内研究会の開催を再開する。研究分担者とこれまでの研究成果を持ち寄り、研究内容を共有するための研究会と、成果物の公刊に向けた打ち合わせを行う。また研究成果の公開と、研究内容に関する議論の場として、既に複数の国際学会およびワークショップの開催・報告を予定している。6月には東京大学で開催される第10回スラブ・ユーラシア研究東アジア大会において、移民/難民をめぐる政策と市民の関わりという側面に焦点を当てたパネルを組織し、カナダおよびセルビアから報告者を招聘する。本大会では研究代表者も報告するほか、司会を務める。また9月にはアルメニアのエレバンで、シリア難民の受け入れ政策の比較研究をテーマとした国際ワークショップを開催予定である。10月にはトルコのガジアンテップ大学が主催のシリア難民のエンパワーメントに関する国際会議に参加し、報告する予定である。これら研究報告の場を通して、これまでの研究で不足する面を把握し、議論を洗練させながら最終的な成果のまとめへ結び付けていくことを計画している。
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Research Products
(35 results)