2019 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴルをとりまくエスノスケープとアイデンティティの重層的動態に関する実証的研究
Project/Area Number |
17H04508
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
滝澤 克彦 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (80516691)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島村 一平 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20390718)
賽漢卓娜 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (20601313)
荒井 幸康 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 共同研究員 (80419209)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | モンゴル / グローバル化 / エスノスケープ / 民族的アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化が進む現代世界におけるモンゴル系諸民族をとりまくエスノスケープとアイデンティティの動態を学際的な社会科学の観点から明らかにしようとするものである。本年度は、前年度からの継続的な現地調査とともに、これまでの調査をもとにした研究成果の公開を行った。 滝澤は、アメリカに在住するモンゴル人の民族意識について、週末に子供にモンゴル語やモンゴル文化を教える「モンゴル学校」の調査をシカゴとサンフランシスコで実施した。また、キリスト教と仏教が現地のモンゴル人コミュニティとどのような関係にあるかを調査し、両者の特徴を比較して分析した。 島村は、モンゴルのヒップホップが構築するエスノスケープについて調査してきたが、その成果をまとめ単著を執筆、出版にこぎつけることができた。一見するとグローバルな音楽文化であるヒップホップを自家籠中のものとする「モンゴル化」の実態などを明らかにした。 賽漢卓娜は、異なる文化集団に移住した後、日々の相互作用の中で移民のエスニシティと社会的な境界はどのように構築していくのかを、北京に移住したモンゴル族2世の事例を通して探った。 2020年3月に行う予定だった米国における集約的調査は、新型コロナウイルス流行のために断念せざるをえなくなった。そのため、繰越しを行った2020年度には、これまで収集した資料を分析し、論文や学会における発表とともに、著書の刊行を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行のために、米国や韓国で予定していた集約的調査が実施できていない。オンラインでの調査などを活用して、一部で代替措置を実施できているが、限界があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度も、新型コロナウイルス流行のため、現地における補足調査が実施できず、繰越し申請を行った。その繰越し分の調査を2021年度に実施する予定である。 具体的には、滝澤は、宗教を通じて新たに生み出される民族的イメージと、それによって結び付けられるネットワークの実態について米国、韓国において最終的な調査と分析を行う。また、島村は、モンゴル国において音楽や芸能を通して新たに生み出される民族イメージと、それが結びつけるネットワークの実態について最終的な分析を行う。賽漢卓娜は、中国の民族的イベント(ナーダムなど)における民族イメージの生成と、そのイベントを通じて形成されるネットワーク、について最終的な調査と分析を行う。また、移住や国際結婚によるモンゴル人の民族的アイデンティティのゆらぎと、それを契機として捉え直され、表現される民族イメージについて中国および日本において調査する。 以上の成果を踏まえてシンポジウムを実施し、共同研究の総括となる分析結果を報告書にまとめる。
|