2019 Fiscal Year Annual Research Report
宋代古墓調査にもとづく伝統中国の社会・家族・ジェンダーの歴史的研究
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17H04525
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
佐々木 愛 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (00362905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 裕司 常葉大学, 外国語学部, 教授 (10242794)
小川 快之 国士舘大学, 文学部, 特別任用教授 (10400798)
大澤 正昭 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (30113187)
石川 重雄 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (50636678)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 墓 / 宋代 / 家族 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、①4/29~5/3および②12/25~29の2回にわたり中国で現地調査を行った。①の調査報告としては「淮河中流域歴史調査報告―宋代古墓を中心として(蚌埠・鳳陽・合肥篇)」(『社会文化論集』16 号, 2020年2月)を、②の調査調査報告としては「浙江省南部歴史調査報告(麗水・温州篇) ―宋代古墓を中心として 」(『東京大学経済学部資料室年報 』10号、2020年3月)を公表した。 ①の調査研究の特色は、調査地にある。我々がこれまでフィールド調査の対象としてきた中国南方―浙江・江西・福建地域―から一歩進め、今回は中国の南北の境界である淮河流域においてその景観と古墓調査を実施した。また今後の研究の展開も見据え、同地域における宋、明清、近現代と様々な時期に作られた墓の調査を行った。今回の調査の結果、これまで我々が中国南方で見てきた単葬墓とは異なる家族墓形式の墓も多くみられることを明らかにすることができた。家族墓は名著『中国家族法の原理』において滋賀秀三氏が「中国の習俗」としてその立論の根拠としてきた墓葬形式であるが、本調査によってそれが中国北方に限定された習俗であることの論拠を一つ積み重ねることができたといえ、本科研がめざしている”滋賀「原理」の歴史化・地域化への試みを前進させることができた。 ②では浙江省最南部に位置する麗水市及び温州市で調査を行った。本調査においては他の南方地域と共通する単葬墓習俗を確認するとともに、鉱山社会という視点、宋代における麗水の地の重要性、墓からみたむすめの嫁ぎ先との関係といった、今後の研究の展開へ向けた新たな着眼点を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、年に2回の現地調査を行い、2回それぞれにつき調査報告書を雑誌に掲載することができた。また調査によって得られた成果は、これまでの先行研究での定説を覆す論拠を補強するものや、今後の新たな研究を推進させるための着眼点となるものであり、今後のさらなる研究の推進が期待できるものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は研究の最終年度にあたっている。予定としては、2020年度も中国現地調査を行い、その調査報告をまとめたうえで、4年間の研究全体の総括を行う予定であった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、現在では中国現地調査を企画できるような状況にはなくなってしまった。対応策としては、本年度はすでに刊行されている宋墓の発掘調査報告書を収集して読むなど、研究室内でも可能な作業に集中する一方、研究打ち合わせをZoomなどオンライン会議で行うことによって研究を継続し、現地調査が可能な時期を待つことである。2020年度内に現地調査ができないようであれば、研究費を翌年度に繰り越し申請を行うこととする。
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Research Products
(5 results)