2018 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeology of early domestic animals in the southern Caucasus: examinations of their phylogeny and pasture range
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17H04534
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 講師 (00571233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 遼平 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40728052)
中沢 隆 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30175492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 家畜 / 古代DNA / タンパク質 / 西アジア / 安定同位体 / 新石器 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究項目「家畜の由来」】 古代DNA解析は、高橋遼平(分担者)と安達登(連携者)が所属する山梨大学の古代DNA専用の実験室で行った。標本数の多い家畜ヤギとヒツジに焦点を当て、昨年度までに用意したプライマーを用いて、古代ヤギとヒツジの骨サンプルからミトコンドリアDNAの増幅を行った。系統研究がより蓄積しているヤギについては、増幅されたミトコンドリアDNAの系統解析を行った。その結果、これまでの見込みとおよそ矛盾しない結果が得られ、コーカサスの初期家畜ヤギが外来であることを示すデータを補強した。 タンパク質化学の分析は、中沢隆(分担者)が所属する奈良女子大学の実験室で行った。ヤギとヒツジを区別するアミノ酸配列の部位を昨年度までに明らかにした結果を基に、古代ヤギとヒツジの骨の分析を進めた。これまでに15点の標本を分析し、ヤギとヒツジの同定を行った。その結果、骨の形態による同定と矛盾しない結果が得られた。また骨の形態では区別できない標本でもアミノ酸配列からヤギとヒツジを区別することができた。この研究は、奈良女子大学の学士課程教育の一環としても行われ、その成果が卒業論文に至った。 【研究項目「家畜の飼育」】 古代家畜の歯エナメル質の酸素・炭素安定同位体分析を本格的に開始し、200点以上の古代サンプルの分析を行った。対象とした家畜はヤギとヒツジに加えて、ウシとブタも含む。ヤギ・ヒツジ・ウシからは酸素・炭素同位体比の季節的な変動パターンを示す良好な結果が得られた。その解析も進めた結果、高地と低地のあいだの季節的な移動の可能性がヤギとウシの一部に認められた。また、一部の家畜については酸素の安定同位体分析が示す季節変動に対して炭素同位体比の変動があまりみられないパターンも明らかになった。この研究は、名古屋大学環境学研究科の博士課程教育の一環としても行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目2つ(「家畜の由来」と「家畜の飼育」)に関わる分析を予定通りに実施することができた。今年度特に進展があったのは安定同位体分析である。昨年度までに名古屋大学博物館(代表者の所属)において整えた実験環境において、今年度200点以上の古代サンプルを処理し、分析結果を得ることができた。その結果は、家畜の飼育行動に関して、研究以前は予想しなかった新たな知見を与えてくれた。 家畜の由来についても、古代DNAの分析結果を増加することができ、家畜ヤギの外来説を補強するデータを蓄積できた。タンパク質分析による動物種の同定分析も着実に進行しており、骨の形態による同定結果に照らし合わせ、それを追認するだけでなく補完することができた。この研究に関わった学部学生が興味を深め、大学院へ進学した。また、論文や学会での成果発表も行うことができた。これらの点から、本研究は順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究項目「家畜の由来」】 古代DNA分析については、研究分担者の高橋遼平氏と協力し、昨年度に開始した古代ヤギとヒツジの分析を継続する。昨年まではギョイテペ遺跡からの標本を中心に分析を進めたが、今年はさらに古い農耕村落(コーカサス地域最古)のハッジ・エラムハンル遺跡からの標本の分析も行う。このようにサンプルを増加させ、昨年得られた系統解析の結果を確認する。 タンパク質分析については、これまでヤギとヒツジの同定基準を確立し、古代骨の分析サンプルを増加させた。その結果、骨の形態ではヤギかヒツジか区別が難しい標本についても区別を正確に行うことができる見通しが立ち、今年はそのサンプル数をさらに増加させる予定である。それによって、ヒツジとヤギの頻度の違いを明らかにすることを目的にしている。現在のところ、家畜ヤギの起源は外来で、アナトリア方面からコーカサスに持ち込まれたと考えられるが、持ち込まれた当初は数が少なく、次第に増加していくことを示すデータを積み上げることが今年度の目標である。 【研究項目「家畜の飼育」】 昨年度、古代家畜の歯エナメル質の炭素・酸素安定同位体分析を本格的に開始し、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタのデータを積み上げた。その結果、一部の家畜のみを季節的に移動している可能性が示された。今年度はさらにサンプル数を増加させ、昨年度得られた結果を補強・検討する予定である。比較標本として、現生ヤギのみを用いていたが、今年度はウシとヒツジも増加させる予定である。それにより、古代家畜のデータの解釈を補強することができる。 また今年度は、ストロンチウム安定同位体の分析も行い、動物の移動に関するデータとその解釈を補強する。ストロンチウム安定同位体の分析は、比較データとして調査地域における標高が異なる各地の土壌サンプルを既に採取している。
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