2017 Fiscal Year Annual Research Report
Conflicts in boundearies and recognition of Alevi groups and changes in Alevi ethnicities in the Middle East, Europe and America
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17H04540
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
佐島 隆 大阪国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40192596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 紀子 中部大学, 国際関係学部, 教授 (00288698)
石川 真作 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (20298748)
山口 昭彦 聖心女子大学, 文学部, 教授 (50302831)
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 境界とコンフリクト / アレヴィー/アレヴィーリキ / エスニシティ / 歴史学と文化人類学 / トランスナショナル / 宗教人類学 / アフル=ハック / ベクタシ/ベクタシリキ |
Outline of Annual Research Achievements |
イスラームの異端とも異教とも言われるアレヴィー関連諸集団は、現在、その諸集団の内外に「境界」が生じ、そこにコンフリクト(軋轢、排除、対立等)が生じている。そしてその境界は、エスニシティに内容や方向性を与えている。しかもその集団に関する認識も多様であり、通時的にも変化することがある。そこでエスニシティの構成や変容について、その社会的文化的宗教的政治的な関連や文脈を明らかにし、歴史学者と共同研究をし、エスニシティやその認識の変化や文化の持続と変容を明らかにすることが本研究の目的である。 その目的を明らかにするために今年度は、イラン、トルコなどを中心に実態調査をした。イランについてはアフル・ハックなどの諸集団の実態調査に着手し、今後の本格的な調査をしたいと考えている。イランにはこのような類似した集団が複数存在していることから、さらに実態調査と文献からの調査研究を実施したいと考えている。 トルコについても実態調査をし、文献からの調査研究をも加えている。また、クルド関係の調査も進めており、特に文献からの研究を中心にすすめている。トルコ人やクルド人関係の社会的政治的動向を考慮しながら進めていきたいと考えている。 また欧米等のトランスナショナル空間においてアレヴィー関連諸集団は、マイノリティとして動態的生存戦略を持ちながらも、それらの境界やエスニシティに生じるコンフリクトやアレヴィー等集団性の認識の多様性と変容について明らかにしたいと考えている。これについて、今年度は文献を通して研究をすすめ、歴史学と共働し、「境界とコンフリクト」の理解と解決策に結びつけるように研究を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレヴィー関連諸集団は、イランにおいては、「ヤーレサーン」や「アフレ=ハック」などと類似していると言われることがある。ヤーレサーンについては一、二の文献があるので、文献資料から研究を進めている。アフレ=ハックについては、文献が少ないので、現地調査を進めている。その集団はイランのケルマンシャー州などイランの西部や西北部に居住している。そこで現地調査に着手し、資料化をしている。 イランに関しては、イラン・イスラム共和国とアメリカ合衆国との間で、国際社会を巻き込んだ形で政治的に問題があることから、それらの情勢を見ながら、現地調査を進めていきたい。現地調査ができない場合には、昨年度調査したことと文献などの分析をしたい。現在の状況からすると、調査は可能であり、現地の人々とつないでくれる人々との関係も良好である。 (言語を中心にした)民族のクルド人、ザザ人、トルコ人、あるいは文化的宗教的な、ムスリム、アレヴィー、アラウィー、ベクタシそして欧州の移民などの集団についても調査を進めている。その中でも様々な諸問題が関連しており、呪術、願かけ、民間信仰、ジェンダー、女神信仰、聖地・聖所など特別な場所への参詣、巡礼、ツーリズムなどについても調査を進め、資料化をし、分析につなげている。 トルコにおいては、調査は可能であるが、政治的な問題については関連を最小限に留めて、進めていきたい。今回の国政選挙などによっては、様々な動きがあると考えられるからである。しかし、それらは、本研究テーマからすると、大きな問題にはならないと考えられる。ヨーロッパに関する現地調査に関して、問題はほとんどないように考えられる。ただし、「巻き込まれ」などについては、十分な注意をしていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究は、トルコ、イラン、欧米に調査旅行をし、資料を収集し、分析を進める。欧米、トルコ、イランの関連諸集団の調査をし、関連資料の収集をするのであるが、本研究メンバーの本務校との都合に合わせて、夏期・冬期・春期などに調査旅行を実施する。 トルコ系のみならずクルド系やザザ語の諸集団、クズルバシ、アフル=ハックなどのシーア派系の諸集団についても関連資料を収集する。イランに関して平成29年度には、研究調査チームを組織し2018年3月に調査を実施した。平成30年度には、継続してさらに調査研究をする。トルコ等においては、これらの諸集団に見られる思想と行動、儀礼、「廟」参詣や願かけ、そして男女に関するジェンダーなどの文化的なコンフリクトについても調査研究をする。トルコ共和国以外でも、例えば、アルバニアにおいても実態調査を実施したい。さらに上記の諸集団が、欧米における移民などトランスナショナルやトランスカルチュラルな空間においてどのような実態を示しているのかも調査したい。その際に政治的社会的情勢を考慮に入れながらすすめていく。 これらの調査や分析による研究成果については、研究会や学会等で発表し公表していく。その際に収集した資料を研究報告書等の形で開示していく。平成29年度には1冊の資料報告書を作成した。それを分析し、論文や書籍につなげたい。予算によっては、平成30年度にも資料集を作成し、研究資料報告書として刊行することを考えている。 シーア派的な諸要素とアレヴィー系関連諸集団との関係、その中に見られるコンフリクトの実態、文化・社会的状況を明らかにしたい。また、これらの諸集団に見られる「廟」参詣および願かけの文化についても調査研究をしていく。これら地域社会での調査と歴史的な文献からの調査、分析をすることにより、実証的な調査研究を進めていきたいと考えている。
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