2020 Fiscal Year Annual Research Report
NATO and Humanitarian Intervention; Thought, Theory and Reality
Project/Area Number |
17H04544
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
福富 満久 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90636557)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | NATO / 軍事介入 / 国際政治 / 人道的介入 / 国際正義 / テロ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はキングス・カレッジ・ロンドンの戦争学研究科に所属して在外研究を行い一次資料などを収集し分析した。2011年以降、中東民主化運動「アラブの春」によってシリアの抑圧体制に抗議した市民と政府の間で内戦が泥沼化し、ISがイラクからシリアへと勢力圏を広げると、大量の難民が欧州へ押し寄せるようになった。これによりアラブ諸国と隣接するトルコなどNATO加盟国が直面する脅威への迅速な対応を求められるようになった。同じく中東民主化運動によってリビアも内戦になった。NATO(北大西洋条約機構)はテロリズムの脅威から欧州市民を守るとして、近接するリビアには介入した。だが、シリアは静観した。NATOがそもそも中東に力を入れるようになったのは、中東を震源地とするグローバル・テロリズムの脅威から欧州市民を守るためであった。欧州の安全保障は、冷戦以降、ソビエトと東欧を仮想敵として主にNATOを軸に、すなわち米国と欧州諸国が協力して維持・模索されてきた。だが、EUの東方拡大に伴い、イスラム教国と隣接するトルコなどの安全保障も重要なテーマとなった。だが、東方拡大は、ロシアとの対抗軸を形成することになった。それがシリア内戦への介入に影響した。この点を明らかにしたことが本年度の主要な成果である。 これまで軍事介入の3要件(①甚だしい人権侵害が起きている②周辺地域の安定・安全を確保する③平和的解決手段がついえている)を満たしており、介入は、正当だということをかねてより主張してきたが、現行の国際「法」では、安保理決議があること、個別的・集団的自衛権を行使すること以外は違法となる。本研究の意義は、そのような恣意的な「国際法体制」を是正していくための足掛かりを築けたことである。今後は差し迫った人道的危機に対して拒否権を握る5大国の恣意的な行動を縛るための法制度整備を急ぐ必要があることも考えていく必要があろう。
|
Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(1 results)