2020 Fiscal Year Annual Research Report
最貧困層の季節的脆弱性とその克服法の検証:多頻度データと経済実験による接近
Project/Area Number |
17H04548
|
Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
高橋 和志 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90450551)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 潤 神戸大学, 経済学研究科, 講師 (30732432)
高野 久紀 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (40450548)
會田 剛史 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センターミクロ経済分析研究グループ, 研究員 (40772645)
黒崎 卓 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90293159)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 消費平準化 / 貧困 / バングラデシュ / ランダム化比較試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、バングラデシュの極貧層を対象として、消費の季節的脆弱性に関する実証分析を実施する。 まず、2018年から2020年にかけて、年間を通じた消費の変動を調べるために、バングラデシュ北部の180の家計を対象に、2週間に1度、簡易生計調査を実施した。1年目(2018-2019年)の分析の結果、9月と10月の農閑期に特に消費の落ち込みが激しいことが判明したため、2年目(2019-2020年)には、年間の中で消費の落ち込みが最も激しい農閑期(10月から12月)までの貯蓄を促進するランダム化比較試験を、現地のNGOと協力して実施した。その結果、貯蓄へのアクセスを促すことで、農閑期の消費の落ち込みが少なくなることが判明した。特に、サンプル貧困層の消費の7割程度を占める食糧消費(なかでもタンパク質摂取)において、10%ほどの改善が見られた。このように貯蓄へのアクセスによる消費上昇効果はあったものの、その効果は非常に短命で、農閑期を越えて持続するほどではなかった。現在はこの結果を軸とした論文の第一次ドラフトを書き終えており、順次、学会等で発表・改訂し、最終的に学術誌への掲載を目指す。 2020年度はコロナの広がりにより、年間を通じた定期調査の実施は困難となったが、10月から12月のコロナ前後の農閑期の落ち込みを調べるために、その間の家計調査は継続した。現在はまだ収集データの分析の途中であるが、暫定的には、コロナ禍のもとでの農閑期の消費の落ち込みは例年と比べて、特に激しくないことがわかっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの広がりにより当初の予定通りには現地調査ができなかったが、現地のカウンターパートとの密なコミュニケーションを通じて、次年度以降も継続して家計調査を実施する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は収集データの分析を進め、論文の学術誌投稿を目指す。
|