2017 Fiscal Year Annual Research Report
日系企業の新興国市場ビジネスと政府間経済協力:ロシア語圏市場を中心に
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17H04553
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
徳永 昌弘 関西大学, 商学部, 教授 (30368196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅沼 桂子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00594409)
安木 新一郎 京都経済短期大学, 経営情報学科, 准教授 (40586012)
松本 かおり 神戸国際大学, 経済学部, 准教授 (80513796)
カン ビクトリヤ 帝京大学, 経済学部, 講師 (90638868)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 外国直接投資(FDI) / 日系企業 / ロシア語圏市場 / 経済協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度に当たる平成29年度は、(1)ロシア語圏市場向け企業活動の基礎データに関する統計・計量分析と、(2)対ロシア「経済協力8項目」の実態調査を重点的に行う予定であった。 (1)については、日系企業の海外進出に関して、日本銀行、財務省、経済産業省、外務省などが公表している公的なデータベースに加えて、民間のデータベース(東洋経済新報社など)も活用して、主に2000年代以降におけるロシアへの企業進出・撤退動向を検討した。その結果、同国市場への日系企業の進出は、トヨタによる現地工場設立が発表された2005年以降に加速したものの、2014年のウクライナ問題による経済制裁や原油価格下落に伴うルーブル下落の影響から、2015年以降は低迷状況にあることが確認できた。なお、企業レベルのミクロデータを利用した研究が近年増えていることを踏まえて、企業レベルの投資活動が把握できるデータベースの活用を試みたが、以前とは異なり、事業所ごとの営業・財務データを個別に取得することはできないことが判明したため、来年度以降の検討課題とした。 (2)については、対ロシア「経済協力8項目」の経済効果を検証する作業の一環として、その中の一つに挙げられている「極東経済・産業振興」に焦点を当て、主にロシア極東に進出した日系企業へのヒアリング調査を現地で行った。その結果、(1)医療や食品など、現地ニーズに合致した分野での事業は比較的順調に推移していること、(2)全般的な投資環境は改善傾向にあるが、優秀な人材の確保や育成の面では課題が残ること、(3)ウクライナ問題に対するロシアへの経済制裁の影響で、将来的なエネルギー開発協力の進展は望み薄であること、などが判明した。以上の現地調査にあわせて、対ロシア投資障壁の一つとされているロシア語の問題に関するアンケート調査を実施し、70名以上の回答を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が目指している目標は2つあり、(1)計量的な分析手法とヒアリング調査に基づく事例研究の有機的な結合を通じて、日系企業によるロシア語圏市場ビジネスの実態を多面的に論じること、ならびに(2)ロシア語圏における新興国市場ビジネスの現状分析を通じて、現地の人的資本育成・高等教育の実状に加えて、今日の日系企業に強く求められているグローバル人材育成の課題と対策を具体的に明らかにすることである。 本年度は、主に(1)についてロシアに焦点を当てて、計10社余りの訪問調査を実施し、その結果の定性的分析・検討を通じて、所期の成果を上げることができた。アンケート調査を通じて収集したデータの定量的分析は、次年度以降の課題である。また、今後の検討対象である(2)についての情報収集も並行して進めており、非英語圏のロシア語圏新興国市場に求められるグローバル人材に関する研究に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、日系企業のロシアビジネスに関する研究と並行して、中央アジア5カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)を中心に、ロシア以外のロシア語圏市場での実態調査に着手する。本研究組織の研究分担者の一人は、すでにウズベキスタン及びカザフスタンにおける現地調査の経験があり、適宜サポートを受けながら、現地に進出した日系企業へのヒアリング調査を行う。 日系企業の対中央アジアビジネスは、政府開発援助(ODA)供与と密接に結びついており、当初から政府間経済協力の枠組みで行われてきた。一部のエネルギー開発プロジェクトを除くと、現在でも純粋な民間信用に基づく事業展開は難しいとされるため、対ロシアビジネス以上に政府間の経済協力が民間投資を促進する重要な要因であると考えられる。そこで、従来の外国直接投資(FDI)に関する研究では、外生的な要因として扱われることが一般的であった政府間の経済協力を内生的に組み込んだモデルを構築するために、中央アジアにおける日系企業のFDIの決定要因を考察する。あわせて、対ロシア投資障壁の一つとされているロシア語の問題が、現地語と並んでロシア語が広く用いられている中央アジアでも観察されるかどうかを検討する。 さらに、筑波大学がロシア語圏の協定大学と進めている「ロシア語圏諸国を対象とした産業界で活躍できるマルチリンガル人材育成プログラム」(文科省の世界展開力事業)の一部は、「経済協力8項目」と深く関わる内容であるため(現地企業インターンシップを通じたグローバル人材育成やロシアの医科大学における医療実務研修など)、関係者の協力を得ながら、現在までの事業成果と問題点の確認を通じて、対ロシア「経済協力8項目」の実現可能性を検討するとともに改善点の洗い出しも行う。
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Research Products
(10 results)