2017 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済形成期における地域的共同性の社会経済史的研究─日本・バリ・タイの比較研究
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17H04554
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科, 教授 (50164835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 康行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40170790)
吉原 直樹 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (40240345)
遠藤 尚 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (40532156)
山内 太 京都産業大学, 経済学部, 教授 (70271856)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 上塩尻村 / 共同性 / 村落社会 / 市場経済化 / 地域経済 / バリ / 観光産業 / スクンプル村 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績は次のような内容として総括することが出来る。 研究初年度として、まず6月に打ち合わせを兼ねた研究会を開催し(於東北大学)た。ここでは、①国内村落調査対象地の長野県上田市上塩尻村に関する従来の研究成果について整理し、市場経済化と共同性の関連、共同性の要となる同族団の人口史的分析、土地市場や金融市場と共同性の関連・非関連について、「地域」の視点から再検討するための論点や着眼点を明らかにできた。同時に、②比較調査対象地であるバリ・スクンプール村に関する既存の研究成果について整理し、対象範囲を拡大しサワン区等行政区を「地域」として考える際の検討調査事項について意見交換を行うことができた。③本年度の上田地方ないしバリ・サワン区の調査スケジュールを計画することができた。④現地事情によって調査準備が整わないためにタイのチェンマイ周辺農村訪問調査は次年度に実施し、従来の研究成果の整理中心に研究することとした。なお、⑤年度末(3月)の研究会においてバリ調査の方法と課題について研究分担者の吉原直樹教授(横浜国大)の報告にもとづき新たな次年度の研究調査にとって必要な知見を共有した。⑥2017年9月と2018年3月末にバリ訪問調査を実施し、バリ州の中でサワン区スクンプル村を管轄するブレレン県が観光政策の新たな中心地として浮上しつつあり、当該地域の地域経済がバリ観光経済の中で大きく市場経済的発展の渦中にあることが確認され、関連する各種行政データを多く収集することができた。⑦研究成果(中間報告)を2017年11月に開催された日本村落研究学会浜松晴野大会において報告(長谷部弘「北部バリ村落における共同性の構造」)することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域的共同性の比較研究を進めるために必要な作業については、タイのチェンマイ周辺地域で実施することを想定していた農村調査がバリ調査の遅延(アグン山噴火による:後述)と現地事情により予定していた時期に行うことができなかったため、次年度以降に実施することにした。それ以外の作業については、国内調査研究は長野県上田の上塩尻を中心とする近隣村落や地域社会について資料調査や収集した分析作業は予定通りに信仰している。海外調査については、上述のタイ訪問調査を次年度以降に実施することにした件を除けば、バリ州行政府の観光政策の現況と将来に関する官公庁データの収集、ブレレン県内のシンガラジャ周辺農村地域(ロビーナ周辺)に関する観光産業の実態調査と資料蒐集、スクンプル村の属するサワン区の地域経済の実態調査(ヒアリングおよび現地資料蒐集)等、現地研究者と共に持続的に継続しつつある。また訪問調査を延期したタイについては、日本、バリの農村との比較分析の視点から従来の研究成果の整理と再検討の作業を行いつつある(新潟大学佐藤教授:研究分担者)。研究は全体としてほぼ予定した範囲で進みつつあるが、強いて問題点をあげるとすれば、今回のバリ調査に際して、バリ島東部のアグン山噴火による警告等が出され、予定していた調査期間に実施できず年度末にずれ込んでしまうというハプニングが発生した。これはタイの調査が延期されるにいたった隠れた原因の一つでもあったので、ここに特筆しておくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
地域的共同性の比較研究を進めるために、国内調査については研究の進んでいる上塩尻を中心とした近隣村落や地域社会について資料調査と分析作業を持続的に進めていくこととし、海外調査については、バリ州の観光政策の現況と将来に関する官公庁データの州作業、ブレレン県内のシンガラジャ周辺農村地域に関する観光産業の実態調査、スクンプル村の属するサワン区の地域経済の実態調査(アンケート調査)を現地研究者と共に持続的に継続していく。またタイについては次年度以降チェンマイ周辺農村地域について現地とコンタクトを取りつつ、日本、バリの農村との比較分析の視点から、訪問調査を実施していくことにしている。研究は全体としてほぼ予定した範囲で進みつつあるが、強いて問題点をあげるとすれば、近年現地の自然環境が火山の噴火(例:バリ島のアグン山)等不安定な状況が続き、予定通りの調査が必ずしも叶わない可能性が低くない点である。現地の関連情報に依拠しながら、調査研究を進めていくことにしている。
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Research Products
(1 results)