2018 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済形成期における地域的共同性の社会経済史的研究─日本・バリ・タイの比較研究
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17H04554
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷部 弘 東北大学, 経済学研究科, 教授 (50164835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 直樹 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (40240345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バリ島 / 観光資本主義 / 村落共同体 / 共同性 / スバック / アダット / ダディア / 市場経済化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、国内村落調査として上田上塩尻村、海外調査をバリ州とチェンマイ県の2つの農村地域について実施した。
1)国内調査については、上田上塩尻村の残存資料について特に藤本蚕業歴史館および上田市立博物館に所蔵されている藤本家文書、佐藤嘉三郎家文書、および佐藤修一家文書について行い、市場経済化と共同性に関わる新たな史料群の利用が可能となった。 2)さらに、海外調査については、3回実施したインドネシア・バリ調査によって、村落運営の構造(ダディア中心のアダット活動運営等)の実態を新たに明らかにすることが出来た。また予定していたアンケートについては、国政選挙前の緊張した社会政治状況を考慮して次年度に繰り延べ実施することとした。現地での資料収集と撮影作業は充分実施することが出来、統計資料等をPDF資料として収集保管することができた。さらにブレレン県観光局およびデンパサール・ウブドの観光協会のインタビューによってバリ観光開発の政策構造や政策実施状況を知ることが出来た。8月に現地での研究協力者と共同で、観光開発に関する小規模な研究ワークショップを開催した。 3)タイ・チェンマイ市近郊農村調査を12月に1回実施し、現地協力者の助けを借りてタイ農村固有の「緩やかな共同性」についての実態確認をすることが出来た。さらに、実態調査を踏まえた研究会を開催(3月、於新潟)した。 4) 研究成果(中間報告)を10月下旬に宮崎で開催された日本村落研究学会大会において報告した(長谷部弘およびイカデ・アンタルティカによるバリの連名報告、佐藤康行によるタイ農村の報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに計画した海外調査は、インドネシア・バリが3回(4月・8月・11月)、タイ・チェンマイが1回(12月)実施する事が出来た。バリで当初予定していた小規模なアンケートは、選挙前の緊張した政治社会情勢を考慮し、次年度に繰り越したが準備はできている。日本とバリ農村・チェンマイ近郊農村の村落的共同性、地域的共同性に関する機能的な比較研究の作業は、バリ調査による成果が非常に大きく、チェンマイ近郊農村は詳細な実態分析は検討作業中である。特にバリのスクンプール村内のアダット的共同性については、親族組織ダディアについての調査がかなり進み、大きな成果をあげつつある。中間報告は、10月下旬の日本村落研究学会大会において報告できた。また、バリ観光開発の実態は、予想より遙かに大規模に進められており、今後の調査によっては、新たな研究課題にもなりうることが判明した。以上より、計画は概ね順調に進展していると評価しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の村落的共同性については、次年度に出版する予定の『近世日本の市場経済化と共同性』(刀水書房)として纏めつつあるが、その完成が今後の第一の課題である。またバリ調査によって判明しつつあるスクンプル村の村落的共同性についての詳細な分析作業が次の第二の課題である。そして、第三に村落社会を超えた地域的共同性を、市場活動や水利組織、地域的行政制度、観光政策と観光開発の視点から明らかにしていく作業が、次年度以降新たな課題として浮上している。 今後の研究は、以上の3つの延長上に推進するために遂行されることとなる。
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Research Products
(7 results)