2017 Fiscal Year Annual Research Report
長期に渡る戦争による反復的Trauma体験が後年の心身に及ぼす影響に関する調査
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17H04566
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
文珠 紀久野 山梨県立大学, 看護学部, 名誉教授 (70191070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 環 聖マリア学院大学, 看護学部, 准教授 (00352352)
小尾 栄子 山梨県立大学, 看護学部, 講師 (80369503)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 戦乱によるTrauma / 健康被害 / 心理ワークショップ / 援助者養成 / 心的外傷の残胃 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、『紛争が紛争国の住民に長期に渡って与える影響を心身両面から明確化し、有効な対応策を見いだし、今後紛争が生じないようにするための予防策を見いだす』ことである。本年度の目的の1つは、長期に渡る戦乱・紛争時に受けた反復性のTraumaの様相を明らかにすることである。目的2は、現在の国民の健康面、心理面を中心とした現状を把握し、過去に受けたTraumaの様相と最近頻発している種々の問題との関連を分析検討することである。 対象国は、東ティモール民主共和国である。2017年度は、研究に必要な物品をコンテナで輸送し、調査がスムーズに実施できるよう準備を行った。戦争時から現在までの状況を調査するために対象者を選定し、東ティモールにおける様々な職種の方にインタビューを実施した。対象者は、性被害・DV被害女性への支援スタッフなど13人である。強いTrauma経験者への調査として、戦争中の銃撃、拘束、拷問等で強いTraumaを経験した人1人に実施した。戦争を経験した一般の方への調査は、Bazartete市の9人に「Life History Line法(LHL法)」と風景構成法を用いて行った。支援者養成のためのワークショップを3回実施し、健康問題、援助とは何か、感情の取り扱い等をテーマとして実施した。 戦乱・紛争が終結し約15年が経過した現在、政治における賄賂等の腐敗、失業率の高さ、教育環境の劣悪さと教師の質の問題等への指摘があった。インフラ整備は徐々に進んだことで生活面についてはかなり改善が進んでいることのようである。健康面については、肥満と高血圧の危険性が示唆された。心理面においても過去の心的外傷の残遺と思われる問題が残存していると思われた。ワークショップを通した援助者養成プログラムは有効であるとの示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施できるよう研究に必要な物品の輸送が完了し、かつインタビュー等のための部屋が整備され、安全で安心できる状況での調査が行うことができている。研究協力者への依頼も可能である。インタビューについては、研究協力者であるコーディネーターのおかげで、対象者も順調に得られ、実施できつつある。ワークショップも3回開催でき、支援者育成が順調に進んでいる。現地精神科クリニックとの協力体制が可能となり、戦乱によるTrauma被害者への対応を実施できるようその準備も進んでいる。 過去の戦乱状況からの変化、現在の問題点のインタビューもスムーズに実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
個別インタビューの対象者を広げ実施する予定である。また、援助者育成のためのワークショップも複数回計画している。特に、傾聴、面接技法の演習、箱庭療法の理解を中心としたワークショップを実施する予定である。 健康状況の把握をするため、対象者へのアクセスを工夫し、20代~60代の男女に協力を依頼する予定である。 過去に性被害を受けた女性へのインタビューは、信頼関係を築いたうえで慎重に行う予定である。
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Research Products
(2 results)