2019 Fiscal Year Annual Research Report
長期に渡る戦争による反復的Trauma体験が後年の心身に及ぼす影響に関する調査
Project/Area Number |
17H04566
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
文珠 紀久野 山梨県立大学, 看護学部, 名誉教授 (70191070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 環 聖マリア学院大学, 看護学部, 准教授 (00352352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 戦乱・紛争によるtrauma / 残遺性trauma / 心理的ワークショップ / 支援者養成プログラム / 健康被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、『紛争が紛争国の住民に長期に渡って与える影響を心身両面から明確化し、有効な対応策を見いだし、今後紛争が生じないようにするための予防策を見いだす』ことである。本年度の目的の1つは、長期に渡る戦乱・紛争時に受けた反復性のTraumaの様相を明らかにすることである。目的2は、現在の国民の健康面、心理面を中心とした現状を把握し、過去に受けたTraumaの様相と最近頻発している種々の問題との関連を分析・検討することである。目的3は、戦乱によるtraumaを抱えている人々への支援ができるよう、支援者養成プログラムを検討し実施することである。 対象国は、東ティモール民主共和国である。2019年度は、戦争を経験した一般の方への調査として、Dili市(首都)の12人、Same市の11人に「Life History Line法(LHL)」と風景構成法、Baum Testを用いて行った。悲哀感や空虚感を抱えていること、traumaと思われる経験が今も残存していることが見えてきた。健康面においては、高血圧症の危険性とともに栄養状態の不良が示唆された。 支援者養成のためのワークショップを3回実施し、心理学の基礎、学習、カウンセリングに必要な知識と技法を、講義と演習を組み合わせて行った。精神科クリニックのスタッフ対象に、箱庭療法の教授と事例を基にしたスーパービジョンを行った。ワークショップを通して、心理学の基本となる知識とスキルの不足を補うことができつつある。 東ティモールの現状に関して、マスコミ関係者にインタビューを実施した。政治的混乱が懸念されているとのことである。また、重いtraumaを抱えている男性3人、女性1人へのインタビューも実施した。インタビューを通して自分の経験が無駄ではないと感じ、Traumaによる影響が少し軽減されたと述べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施できる研究環境の整備ができている。研究協力者、および通訳者への依頼も可能である。インタビューについては、研究協力者であるコーディネーターのおかげで、対象者も順調に得られ、実施できつつある。 ワークショップは3回、精神科クリニックスタッフへのスーパービジョンも実施でき、支援者育成が順調に進んでいる。現地における戦乱によるTrauma被害者への対応を計画している施設との協力関係も確立できている。 過去の戦乱状況からの変化、現在の問題点に関するインタビュー対象者も得られ、調査はスムーズに実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度においては、個別インタビューの対象者をさらに広げ実施する予定である。特に、1975年インドネシアからの侵攻によって、過酷な体験をしたと言われる地域の住民への調査を実施する予定である。さらに、すでに研究協力を得たAcbitとPRADETと共同して、戦乱被害者への調査を行う予定である。また、支援者育成のためのワークショップも複数回計画している。心理学の基礎知識に関する講義とスキルの演習、特に、面接技法の演習、事例を活用したスーパービジョンを実施する予定である。
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Research Products
(4 results)