2019 Fiscal Year Annual Research Report
教育技術移転アプローチによるインドネシア会計教育基盤の形成
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17H04571
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
齋藤 雅子 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00434788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 由佳理 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (20584501)
譚 鵬 中部大学, 経営情報学部, 講師 (70632280)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際会計 / 会計教育 / グローバル人材育成 / インドネシア / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年度にあたる2019年度については、主たる3つの活動を行った。第一に、簿記会計の理解度把握を目的とした日本の大学生に対する簿記会計の学習環境調査を実施した。第二に、日本、インドネシアの複数調査の分析を踏まえ、モデル教材案を作成し、日本において先行して試験的に導入した。第三に、日本で実施済の簿記会計に関する学習環境調査について、成果発表を行った。 本年度においても、当初の年度計画にほぼ沿って研究活動を遂行した。第一の活動については、わが国大学生が簿記会計を学習する上で影響する環境要因を明らかにすることを目的としたものである。本調査によって、想定していたことではあるが、学習意欲の保持には教材の充実が一つの重要な解決策であることが統計的に示されている。 第二の活動は、モデル教材案の試験的導入である。これまでの調査結果を踏まえ作成したモデル教材案を、本年度は日本の2大学(東京、大阪)で試験的に導入した。そして、入手したサンプルから教育的効果を統計的に測定し、検証する作業をを引き続き進めているところである。本調査については、インドネシア現地でも同様に実施する計画であり、同国での次年度の試験的導入に備え、現地語へ翻訳する作業を進めている。ただし、モデル教材案の性質上、多くの簿記会計の専門用語が含まれているため、研究代表者が英訳を担当し、その上で現地研究協力者が現地語に訳すという二段階方式の作業となるため、準備期間をある程度勘案する必要がある。 第三の活動は、成果発表に関連するものである。過去に行った調査を踏まえまとめた研究成果を、国際学会において発表した。その発表がセッションアワードを受賞したことから、本研究活動の一部であるものの、国際的な水準で評価されたと認識している。そのほかには、簿記学習環境の調査分析にもとづく成果発表として、本年度末に論文1点を雑誌にて発刊済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行にあたっては、研究代表者並びに研究分担者が逐次連携しながら順調に活動を進めてきている。成果発表をできるだけ円滑に行う方針で活動を行ってきたが、年度あたり最低1点以上の論文発刊ないし1点以上の学会発表を念頭におき、当初のほぼ計画どおりに成果をまとめている。 このような当初計画目標に沿った成果発表を達成している背景には、研究組織内の情報共有をはかる体制づくりが効果的であったと考えている。研究会を年に数回設定し、相互に活動内容を報告し、それによる研究活動の可視化を行うとともに、問題意識の共有をはかった。それぞれの活動について意見や情報を自由に交換し合うことで、その後の活動に関する示唆を、研究代表者、研究分担者、現地研究協力者が活動ベースで把握し、また得る場となった。 実績の概要で述べたとおり、次の3点の活動を主に進めてきた。1点目に、簿記会計の理解度把握を目的とした日本の大学生に対する簿記会計の学習環境調査を実施した。2点目に、先述した日本、インドネシア調査の分析を踏まえ、モデル教材案を作成し、日本において先行して試験的に導入した。そして3点目であるが、日本で実施済の簿記会計に関する学習環境調査では、教材が大学生の仕訳の理解度に影響することを示すといった成果の発表につなげた。 以上の点や、昨年度延期した現地調査についても遂行が完了したことで、本年度の活動においてはやや遅れていた当初計画のスケジュールがほぼ回復しつつある。そういった意味からも、活動の進捗についてはほぼ順調に進展してきているといえる。本研究課題の遂行を通じて最終目標とするモデル教材開発は、インドネシアだけでなく、わが国においても普遍的に活用しやすい教材を念頭においている。そのため、試験的に導入した教育的効果を測定するにあたっては、両国における教育・文化面並びにビジネス慣習のちがいを考慮に入れた上で行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が研究最終年度にあたるため、インドネシア並びに日本の大学において実施した調査データ並びに分析を通じて裏打ちされたこれまでの研究活動の総括を進める。具体的には、学術研究書やウェブサイト等を活用するなどして、より広く社会へ効果的に成果を発信できる手段を、研究代表者、研究分担者並びにインドネシア現地の研究協力者と議論、検討を重ねながら、可能な限りスピーディーに構築していく所存である。インドネシアおよび日本で実施した活動により得られた数々の知見については、学会発表やジャーナル発刊等を通じて適宜発信していく計画であるが、それらを最終的には学術研究書にまとめることを目指して活動を行う。 研究活動についてであるが、すでに実施してきたインドネシアおよび日本における複数の調査を基礎とし、日本国内で試験的に実施したモデル教材案をインドネシア現地の大学や研究者らの協力を得ながら試験的に導入、大学生の学習理解度を測定し、効果の検証を行う。モデル教材案を、昨年度日本国内の大学において試験的に導入しており、現在、その教育的効果の測定・検証を進めているところである。その日本の効果とインドネシアの効果について比較分析を試みる計画である。 それに先立ち、現地研究協力者の協力を得て、モデル教材案原文をインドネシア語へ翻訳する作業に取り掛かっており、簿記会計の専門用語を含む教材のインドネシア語版の準備が整い次第、現地で導入する。モデル教材案インドネシア導入に基づく検証・分析は、本年度の上半期中を目途に完了する計画である。そして、同効果測定を踏まえ、両国における教育・文化面並びにビジネス慣習のちがいを考慮に入れ、モデル教材開発につなげていきたい。実施済の複数の調査には、わが国簿記教育で活用されてきた教材調査や大学生に関する簿記スキルおよび学習環境調査があり、当然ながらそれらの考察結果も教材開発に反映していく。
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