2018 Fiscal Year Annual Research Report
社会文化的アプローチによる国際教育協力の学習環境デザイン
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17H04572
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
久保田 賢一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80268325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 磨貴子 明治大学, 国際日本学部, 専任准教授 (80581686)
今野 貴之 明星大学, 教育学部, 准教授 (70632602)
時任 隼平 関西学院大学, 高等教育推進センター, 准教授 (20713134)
山本 良太 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (00734873)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育工学 / 社会文化的アプローチ / 学習環境デザイン / 教育文化 / 協働による教育開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,途上国の学校教育において日本の教育経験を生かした学習環境をデザインする際の留意点を明らかにすることである.具体的には,フィリピン,バングラデシュ,ミャンマー,中国,カンボジア,ベトナム,パレスチナ等の基礎教育を対象とし,ICT教育や思考力育成等の日本の教育経験を対象国の基礎教育の文脈にどのように取り入れられるか,その整合性と具体的方略を,対象国の研究者と協働で取り組み,明らかにしていく. 平成30年度は,フィリピンの小学校を対象とし,現地の教育環境に適したICT教育モデルを構築,提案するとともに,その普及のためのワークショップを実施した.加えて,カンボジア,ベトナム,パレスチナでのフィールド調査に向けたベースライン調査を行い,平成31年度からの本格的な調査に向けた準備を進めた.なお,当初バングラデシュでのフィールド調査を予定していたが,現地の治安悪化に伴い渡航および調査が制限される可能性が高まり,ベトナムでの調査を追加することとなった.さらに,日本の教育経験を途上国に持ち込む際に問題となる社会文化的要因について,フィリピン,ミャンマー,カンボジアの研究者を日本に招聘し,議論する機会を設けた.招聘した各研究者は,日本の大学院で学位取得した者や,日本の研究者と協働し現地の教育改善に向けた取り組みに従事した経験を持つ者である.議論より得られたデータは,平成31年度の論文化に向けて分析され,知見としてまとめられる予定である.そして,得られた知見は各国の実践および調査結果を統合的に考察する際の枠組みとする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,中国およびミャンマーを対象とした調査をほぼ終えている. 平成30年度は,平成29年度に引き続きフィリピンでの実践と調査が行われた.具体的には,フィリピン・東ダバオ州にある小学校を対象としたICT教育普及のための取り組みである.限られた教育環境の中で教師が主体的に教育改善に取り組むためのリソースとしてICTを提案し,BYOD(Bring Your Own Device)の考え方を紹介するとともに,外部支援者による積極的な実践への関与を通して教師の発達と新しいICT活用方法の開発を試み,調査に向けた準備が進んでいる. さらに,より汎用的な知見へと拡張することを企図し,調査対象国を拡大するためのベースライン調査に取り組んだ.ベトナム,カンボジア,パレスチナでの調査を行うために,現地でのベースライン調査および現地関係者との協力関係構築が進められている.ベトナムでは,ハノイ近辺のバクザン州においてJICAの教員研修(Lesson Studyの普及)の効果に関するインタビュー調査を行った.カンボジアでは,シェムリアップ州の教員養成大学の教員4名に対してLesson Studyに関するインタビューを実施しデータを得た.パレスチナでは,理数科教育の改善が進められており,そこで実施された教員研修を受講した教師の授業実践を対象とした調査を行う計画が進んでいる. 論文化に向けた取り組みについても同時並行で進行中である.ミャンマーにおけるLesson Studyの投稿論文を執筆中である.さらに,フィリピン,ミャンマー,カンボジアの研究者との日本の教育経験を現地の文脈に持ち込む際に生じる摩擦を整理し知見としてまとめた論文を現在執筆中である. 以上のように,調査と論文化が進展しており,「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,フィリピン,ベトナム,カンボジア,パレスチナ、モンゴルでの実践と調査を行う.フィリピンでは,分担者の山本が平成30年度に引き続きフィリピン東ダバオ州にある小学校を対象とした実践と調査を行う.昨年度までに行ったBYODに基づく現地教師の主体的な教育改善に向けた取り組みのプロセスを記録するとともに,教師に対するアンケートおよびインタビュー調査を行い,そのプロセスにおける困難やそれを乗り越える要因について明らかにする.ベトナムでは時任が中心となり,ハノイ師範大学と連携し,日本の教員養成の知見がハノイの教員養成課程でどのように活用できるのかを議論し,知見としてまとめる.カンボジアでは今野が中心となり,シェムリアップ州の教員養成大学教員に対するLesson Studyに関するインタビューを継続し,教員養成課程における活用の可能性を知見としてまとめる.さらに,パレスチナでは,理数科教育改善のためのプロジェクトを岸が現地にてフィールド調査する.加えて,収集した授業映像を研究分担者が分析し,その課題と可能性について整理するとともに改善に向けた提案をまとめる.中国,モンゴルでは,大学院生との研究交流会を開き,学術交流の可能性を探る. 調査と同時に,論文化に向けた執筆作業を進める.各国で得られたデータは,各担当の分担者および代表者が分析,論文化を行う.加えて,各国を対象としたデータを統合的に考察するために,平成30年度に実施したフィリピン,ミャンマー,カンボジアの各研究協力者との議論をまとめた結果を枠組みとし,途上国の学校教育において日本の教育経験を生かした学習環境をデザインする際の,より汎用的かつ実用的な留意点の導出に取り組む.
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Research Products
(17 results)