2019 Fiscal Year Annual Research Report
微化石相の多様性に着目した古生代前半の海洋環境の復元と展示普及事業への活用
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17H04581
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上松 佐知子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50466661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸岡 照幸 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80400646)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筆石 / コノドント / 微化石層序 / オルドビス紀 / シルル紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タイおよび半島部マレーシアの下部・中部古生界について微化石層序の検討を行い、精密な層序対比を可能にするとともに、これらの成果をジオパーク事業へ還元することを目的としている。令和元年度は、前年度に引き続きタイ王国南部において野外調査を実施し、試料の検討を行った。得られた成果を以下に示す。 1)タイ南部タルタオ島 本島には、カンブリア系~最下部オルドビス系のタルタオ層群と下部オルドビス系サトゥン層群トゥンソン層が分布する。このうちトゥンソン層最上部を構成する炭酸塩岩には、葉理の積み重なりからなるドーム状、円柱状の外形を持った“ストロマトライト”がよく発達することが知られている。今回の調査でこれらのサンプリングを行い、“ストロマトライト”の検討を行うとともにコノドント化石を用いた年代検討を行った。この結果、ドーム状、円柱状の形態は藍色細菌による真のストロマトライトではなく、海綿類のつくる構造体であることが明らかになった。またコノドント化石の層序学的検討から、当該層は下部オルドビス系Floianに相当することが明らかになった。以上の成果は、令和元年6月に米・カリフォルニア大学リバーサイド校で開催された11th North American Paleontological Conventionで発表されている。 2)カオヌイ・ジオサイト 本ジオサイトに分布する上部オルドビス系および下部シルル系について、筆石化石を用いた層序学的検討を行った。本地域の古生界堆積岩類は、おおよそ下位より炭酸塩岩、泥岩、砂岩、泥岩の順に累重する。これまでに、三葉虫、腕足類、筆石化石を用いて堆積年代が推定されていたが、詳細な層序学的研究は行われていなかった。今回筆石化石を検討した結果、オルドビス紀-シルル紀境界は砂岩層の上位、最上部泥岩層の最下部に相当することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、コノドント・筆石化石を中心に微化石層序に関する研究はおおむね順調に進展している。またジオパーク事業への貢献として、カオヌイ・ジオサイトのデータをタイ鉱産資源局に提供し、活用してもらっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のこれまでの流れでは、主に微化石層序の検討が中心であった。今後は化学分析に力を入れ、より定量的な古環境復元を行う予定である。具体的な予定は以下の通りである。 1)化学分析は、特にカオヌイ・ジオサイトについて行う。現在野外調査が実施できない状態であるが、分析については既に採取した岩石サンプルを用いて実施可能である。 2)微化石層序はこれまでにオルドビス系の下部(Floian)、中部から上部Katianと、シルル系の中部から上部、デボン系下部について検討を進めてきた。今後は、これらの“隙間”を埋めるため、特にオルドビス系下部-中部、オルドビス系最上部-シルル系下部、シルル系上部-デボン系下部の層序学的検討を行い、できる限り連続した層序の構築を目指す。特にオルドビス系最上部-シルル系下部の層序について、筆石化石を用いてより詳細な検討を行う。
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Research Products
(13 results)