2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sustainable assessment of global inland lakes using terrestrial water circulation model
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17H04585
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
峠 嘉哉 東北大学, 工学研究科, 助教 (90761536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 信 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10447138)
風間 聡 東北大学, 工学研究科, 教授 (50272018)
小森 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50622627)
三戸部 佑太 東北学院大学, 工学部, 准教授 (60700135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 陸域水循環モデル / 大陸性内陸湖 / 衛星解析 / 灌漑 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大陸性内陸湖を対象として,過去から将来への水位変動を陸域水循環解析を用いて再現・予測すると共に,水位変動が生じた場合の周辺環境への影響を現地調査・観測から評価することを目的としている.水循環や環境影響の傾向が特徴的な内陸湖を指定内陸湖として選定して重点的な観測調査を行うと共に,全球の内陸湖を対象にした持続可能性評価から消長の進行度を区分する.本年度は指定内陸湖を対象に現地調査・観測を重点的に行うと共に,トゥルカナ湖を対象に水循環モデルの構築を行った. 既に深刻な環境影響が進行したと位置づけられるアラル海流域では,地表面温度の日格差と陸面過程モデルを組み合わせることで,灌漑による人為的な冷却効果を推定する手法を確立し,アムダリアデルタを対象に過去の渇水年における渇水影響範囲を推定した. これから縮小することが見込まれるケニアのトゥルカナ湖では,水体から砂漠という大規模な土地被覆変化による気象影響を観測するため,トゥルカナ湖周辺に気象ステーションを設置し定点気象観測を開始した.観測項目は,降水量・気温・風速風向・湿度である.加えて,水位変動を観測するための水圧センサーを湖中に設置した.昨年度に依頼した定期塩分濃度観測の結果を収集し,大まかな年内の塩分濃度の推移を把握した.引き続き定期観測を依頼しており,来年度以降には水位変動等との比較が行える状態とした. また,トゥルカナ湖流域の最上流域にあたるエチオピア高原でも調査を行い,定点土壌水分量計を設置すると共に地域の水利用や気候変動について聞取りを行った.エチオピア国内における現地農業統計や今後の灌漑開発計画についての一次資料を入手した. トゥルカナ湖を対象にした水循環モデルを構築し,現地資料とモデル精度の比較を行った.現状では河川流量の過大評価が顕著であるため,今後はモデル精度の改善が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,全球の内陸湖を対象に水循環・環境影響について以下の3点を計画している.(1)水循環や環境影響の傾向が特徴的な指定内陸湖における現状調査と観測記録,(2)陸域水循環モデルを用いた水位変動の再現・将来予測,(3)内陸湖の環境影響評価である.本年度では,指定内陸湖であるトゥルカナ湖を対象に(1)と(2)を重点的に行い,概ね順調に進展している. (1)については,気象ステーションによる定点観測を開始したため,湖が縮小する前の現在における数年間の気象条件を連続的に観測する体制を構築した.また,基本情報である水位変化についても,水圧計による定点観測を開始した.現地協力者に塩分濃度の定期観測を依頼し,一年間の連続した観測データを収集した.トゥルカナ湖の水位が拡大している原因について,貯水量増加と湖底地形変化の間で塩分濃度の挙動が異なると考えられるため,この定期観測の継続は水位変動の原因を考察するための観測資料になると期待される. また,大地溝帯に位置する他の内陸湖に関しても情報収集を行った.大地溝帯に位置する内陸湖は現在拡大傾向にあるものが多い一方で,その水位変化の原因が不明であることや,水位変化が進行した場合に予測される環境影響として水質の変化による生態影響が深刻であることが分かった. (2)については,まずGSMaP等の降水量データセットで流域内の降水量変化を確認し,トゥルカナ湖の拡大傾向について考察したが長期的変化は見られなかった.そこで現在は陸面過程モデルを流域全体に適用し,特にエチオピア領内の土地被覆変化を考慮した水循環モデルの構築を進めている.上流側の農業統計や気象データが必要であるため,エチオピアでも現地調査を行い,定点土壌水分計を設置すると共に農業統計を入手し,現地農家に近年の気候変化や気象災害についての聞き取り調査を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
水循環モデルによる内陸湖縮小の再現・将来予測を進める.指定内陸湖のトゥルカナ湖において過去30年間の水位変動の再現計算を行い,水位変動の原因を定量的に推定する.エチオピア領内における気象データを収集し,入力データ・モデルの双方について精度を向上し,河川流量や内陸湖の消長や土壌水分量観測結果に基づいて検証を行う.次に,現地農業資料から推定される将来の灌漑面積分布を基に複数の灌漑地開発シナリオを設定し,それぞれにおけるトゥルカナ湖変化を予測する.アラル海での過去の事例に基づいてトゥルカナ湖の持続可能点・環境分岐点を設定し,どこまでの灌漑開発が持続可能なのかを推計する. 次に全球の大規模内陸湖を対象とした水循環解析を進める.貯水量が100Gtを超える内陸湖を選定し,TOPEX/Poseidon等の湖面水位の衛星データが利用可能な過去20年における水位変動を再現する.気候変動による影響評価をCMIP6等のモデルアンサンブルを入力条件として行う.現況再現・将来予測において,水位変動が顕著な内陸湖では流域内の気象条件と比較することで変動の要因となっている気象要素・人的要因について考察する. 指定内陸湖での調査観測では構築した観測体制を継続する.トゥルカナ湖では塩分濃度や水位変化の関係や現地気象データに基づいて内陸湖縮小の原因を考察すると共に,湖水位の変動に伴って周辺領域が氾濫し,水質が悪化すること等も問題視されているため,内陸湖水位と生態系影響や漁獲量等についても調査する.
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