2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehending area's context and proposal of improvement in informal settlements in Accra, Ghana
Project/Area Number |
17H04594
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木多 道宏 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90252593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志摩 憲寿 東洋大学, 国際学部, 准教授 (90447433)
岡崎 瑠美 芝浦工業大学, 建築学部, 講師 (90780792)
中島 直人 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30345079)
土田 寛 東京電機大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00625353)
下田 元毅 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30595723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非正規市街地 / 地域文脈 / 都市形成 / 社会・空間構造 / 自律的コミュニティ / 住環境運営 / 持続的市街地改善 / 参加型地域づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
調査A:アクラの都市形成の文脈と植民地時代の都市計画の評価 既往文献の調査を行い、植民地化以前、植民地時代、独立を経て現代に到るまでの都市形成の履歴を把握した。植民地時代の都市計画が現代の非正規地市街地やスラムの形成の素地となっていたこと、世界銀行による1980年代のSAP(構造調整プログラム)が地方部の産業を衰退に追い込み、貧困層の都市への流入がスラム形成の直接的な要因となったことを確認した。 調査B:非正規市街地における地域文脈の解読 La地域のAbese地区とKowe地区を調査対象とした。両地区とも、クランと呼ばれる父系制血縁集団からなり、Abese地区は15、Kowe地区は6のクランからなる。クランごとに集会が毎週開催され、建物の修繕、上水タンクや共同シャワーの維持管理、外部空間の維持管理、相互扶助などが行われている。地区ごとに代表者チーフが選定され、クランの代表者が集まる地区集会を開催し、下水道の整備や行事の運営など、地区全体を運営していることがわかった。土地は神のものであり、チーフが制度上の所有権を持つ。細街路が大半を占めるが、地区を貫通する街路に対してL型に接続され、開放的な街路ネットワークが形成されている。戸外行動は街路の階層性に対応するように、会話、遊び、家事、商売、休憩など多様に展開されていた。後から拡張されたエリア(拡張街区)には維持管理が及ばず、外部空間の状態が悪くゴミが氾濫していた。下水道は埋設されず、開渠に家庭からの雑排水が流れ悪臭を放っていた。 調査C:参加型地域づくりの可能性評価 調査期間中は地区の役員と行動を共にし、調査結果と改善の可能性について随時議論した。これらの成果を地区集会で発表し、清掃イベントによる社会実験、下水経路の改善、コミュニティビジネスの立ち上げなど、今後の活動方針について合意形成を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究組織の全員がアクラに渡航し、当初予定されていた調査を遂行するとともに、試行的踏査を行い、随時意見交換をしながら、次年度以降の調査研究について、当初の計画よりも学術・実践の両面でより有意義な目標を再構築することができた。 調査Aでは、アクラの都市形成や非正規市街地形成に関する文献の収集と既往研究の調査を行い、当初の予定を終了した。これに加え、都市形成に重要な役割を果たした近現代の主要な開発プロジェクトについて踏査を行った結果、独立後の住宅地開発は、アフリカ・サブサハラの社会や風土性への配慮が見られたことから、市街地改善のための有効な知見になることを発見した。当初は予見できなかったアプローチであり、次年度以降も調査を継続することとした。 調査Bと調査Cについては、調査対象地区の拡大に成功した。La地域は8つのコミュニティからなり、前年度まではAbese地区の調査を中心に行なってきたが、今年度はさらに西に隣接するKowe地区へと調査対象を拡張した。La地域はコミュニティの結束が極めて強く、これまで他大学・他機関による調査はなされていなかったことから、本研究チームが信頼を得て複数のコミュニティの調査を許されたことは極めて有意義である。また、両地区ともアシャンティ王国時代から形成された伝統街区と、後に森林を切り崩しながら宅地に転換した拡張街区からなることが判明した。当初の研究計画では、伝統街区における良好な住環境運営のモデルを解読し、それを現代的まちづくりへと発展させることを主目的としていたが、それに並行して、不衛生かつ未成熟な拡張街区を持続的に改善していくという挑戦的な機会を見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査A:アクラにおける独立後・近代の都市開発には、プランニングの質や、ガーナの風土性への対応の面で、注目すべきプロジェクトがある。これらの計画理念や内容をレビューし、今後の都市や居住地再生に継承するべき要点を検討する。 調査B-1:住環境運営の仕組み(社会組織、共同施設の維持管理、行事の運営、宗教的慣習など)、空間構造、生活行動に関する調査を本年度も継続する。 調査B-2:建築生産に関する調査を行う。建物に採用されている伝統的・土着的な材料・構法、材料の調達の方法、建設に関わる人材・労働者組織の存否とその構成について調査を実施する。これらの情報を基に、新たな素材や構法との組み合わせによる安価で安全なリノベーションや建設技術の検討を行い、建設マニュアルの素案を作成する。 調査B-3: La地域には伝統的な都市コミュニティの継承の歴史や、初代大統領が独立運動していた際の隠れ家など、西欧社会には記録や認識のされていない大切な史実や環境資源のあることがわかった。同様の探索を継続し、これを生かした環境整備や産業の創出を検討する。 調査C-1: 路地や血縁組織など、小規模な社会・空間単位を基礎として、環境改善の体制づくりと実践を行う。衛生状態が良くない拡張街区において、清掃活動により住環境向上の意識を共有し、活動グループを編成した上で、排水路の流出元や経路、排水の流量などを分析し、新たな排水路の計画や改修を試行する。この時、子どものグループも編成し環境教育を兼ねた改善活動を試みる。 調査C-2:好きな場所、大切な場所などをインタビューやワークショップなどで把握し、地域に形成されている人々の環境イメージを把握・共有する。これらを踏まえ、将来像を描きながら、環境デザインガイドラインのコンセプトや内容を検討する。
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Research Products
(4 results)